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□ちょこっとの勇気
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ちょこっとの勇気


彼は、甘いものが好きだろうか?
もしかしたら極度のチョコ嫌いかもしれない
卵を食べたら死んでしまう人かもしれない
だから俺は作らない。
作 れ な い ん だ よ
心の中でずるい言い訳。
聞いてみればいいことなのにそれをしようとはせず
恐れて逃げて行動を起こそうとしない臆病者。
それでいいんだ、だって俺はダメダメのダメツナなのだから

「10代目!あいつ昨日玉子サンド買ってましたよ!!」
「ツーナ!!お昼の弁当に玉子焼き、入ってたぜ?」

周りからすればだからどうした、と言いたくなる様な言葉
でも俺には2人が言おうとしていることが分かる
アレルギーがあるわけでもないのだから
何も恐れることはなく作って渡せばいい。
きっと、そういいたいんでしょ?
でもまだ聞かないといけないことはある。

『甘いものは、好きですか?』

人がいるときは駄目、周りに何か言われるかもしれないから。
話しかける勇気も無いよ、緊張して何も言えなくなるから。
直接が無理でメールも出来いない、だってアドレス知らないから。
何か一つくらい自分で行動を起こそうと思った、けど
やっぱり・・・・俺は何も出来ないみたいだ
廊下に出たとき1人でロッカーの前に立つ彼がいた。
心の中で葛藤をしている間にほら・・・
もう用事を済ませて、行ってしまったじゃないか。



「おい、ちゃんと宿題提出してから帰れよー!!
 それと沢田!お前は英語の補習課題だ」

手渡されたプリントの量にため息をつく
はやく終わらせて帰ろう。
いつになるか分からないから、山本たちには先に帰ってもらった。
1枚目のプリントをめくれば知らない単語のオンパレード
帰ってもらって正解だったなぁ・・・・

「はぁ」

また1人、また1人と宿題を終わらせ帰っていくけどプリントは全く進まない。
自分の馬鹿さ加減に嫌気が差してくる。
やっと1枚終わったところで軽く伸びをする。
残ってるのは俺と、あと1人かぁ。

・・・・・あのカエルのストラップって!

意味不明な長文のせいで舞い降りていた眠気も吹っ飛んだ。
教室には俺と彼だけで、他に人は居なくて・・・・
そう考えると急に心臓が大きく音を立てて脈動して異常なくらい顔に熱が集まる。
躊躇して自分の席を振り返ったりしてなかなか一歩が踏み出せない
やっと2mくらいの位置になったとき、人の気配を感じたのか彼がこちらを振り向いた
さっきまで考えていた言葉が一斉に頭を駆け巡る。
けど、さっき没にしたものばかりで、何を声に出せばいいのか。
不思議そうな顔をしてこっちを見ている。
首傾げててなんか可愛いなとかそんなことじゃなくて
俺が本当に言わないといけないのは発した瞬間引かれる言葉でなくて
もっと簡単で10文字以内で簡潔に述べれるものであって──!

「あ、甘いものは・・・好きですか!!」

俺が聞きたかったのはこの答え。
急にこんなことを聞くもんだから相手は吃驚してしまっている
いつもポーカーフェイスの彼が少し目を見開いてこっちを見てる。
珍しい表情嬉しいな、とか思いながら慌てて言葉を付け加えた

「例えば、その、チョ・・・コとか?」
「・・・・甘いもの好きですよー」

あぁ、と今の質問で気づいたであろう彼。
チラリと黒板の日にちを確認してから答えてくれた
気づかれてしまった、気づいちゃった・・・・!

「最近は友チョコ流行ってますしねー」

何気ない一言が心にグサリと突き刺さる、こともなかった事実に自分が1番驚いた。
これをきっかけに仲良くなれればいいなぁ
そんな風に思えてすぐに「うん、そうなんだ」と、返事をした。
今から頑張ってプリント終わらせて考えよう。
料理なんてしたことないけど、だけど。
死ぬ気でやれば出来るはずだから

口元が緩むのが押さえきれない

『楽しみにしてますんでー』なんて言われてしまったら

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