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□優しさと背中の温もり
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学パロ(?)です!

ちりんちりーん。

何で王子が自転車になんだよ
車は迷惑とか関係ねーし。
だって俺、王子だもん

そんな理屈は通るはずが無かった

校舎の裏にある駐輪所
外はまだ早い時間にもかかわらず暗く
闇に染まっており、秋の終わりが近いことを示している

アレ、11月は秋か・・・?
多分、中旬までは秋だろ。

暦上ではとか関係なく自己完結して、北風が吹きつける
薄暗い自転車の散乱した道の奥へと足を速めた

あーあ、こんなに冷えるならマフラー持ってこりゃ良かったぜ

優しさと背中の温もり

自転車がまだまばらに残っている中で黒い塊が放置されている
風で飛ばされた雨カッパかよ。
・・・・いや、待て待て待て、
徐々に距離が縮まるとそれが、カエルだと気づく

「何やってンだよ、フラン」

カエルはカエルでもただのカエルではなく人間
黄緑色の自転車の手前にある“黒いもの”
それはカッパではなくベルの後輩、フランだった
制服のブレザー、コートにマフラー。
まぁまぁ、まぁまぁ普通のいでたち
手にはもこもこした毛糸の手袋
耳には白いウサギの尻尾を千切って作ったようなイヤーマフ
一際目に付くのは黒色の天辺にボンボンの付いた
・・・・・ 目 だ し 帽 。
目の部分にはしっかりスキー用のゴーグルも装着されている
風の入る隙間は無く完全防御の重装備

「お前さ、今何月か知ってる?」
「冬真っ盛りの11月ですー・・・」
「まだ盛りじゃねぇし。
 仮にそうだとしてもここまで徹底して寒さから逃げるヤツ居ないだろ」
「雪国の人はきっとこうしますー」
「雪国でもないからな、ここ。
 ってか、何してるわけ?」

しばらくの間、正確には北風が3回ほどふいた後
その状態でずるずると前進し始めた
え。もしかして、
強風から身を守りながら進んでるのか・・・!?

「・・・プッ。馬鹿だろ!馬鹿だろお前!!」
「うるさいですねー
 寒さを笑うやつは寒さに泣きますよー
 凍え死んでしまえ堕王子ー・・・・」
「真っ先に死ぬのカエルだろ」

一通り馬鹿笑いを繰り返した後
鼻水をズビビーとすするフランを横目に道の奥へと歩き始めた
黒い有名ブランドのマークが刻まれた自転車には
黄色のスプレーで王冠が描かれているので所持者の顔がすぐに思い浮かぶ
言わずとも分かるベルフェゴールだ。
ヴァリアーマークの形をしたストラップの付いた鍵を取り出し開錠
未だに地面を匍匐(ほふく)前進しているフランの傍まで自転車を押し立ち止まった

「乗れよ」
「・・・・は?」
「2人乗りなら、後ろは寒くねーだろ」

怪しいだとかぶつぶつ呟いているフランだったが
最後は直線的な優しさに素直に後ろへ腰を下ろした
きゅっとベルの腰を掴めば手袋越しにじわり、と
体温が伝わってきて無償にもどかしくなった。
おもむろに手袋を外したフランにベルは驚いたが
さっきよりも、きつく掴まれた腰周りに口角が自然と上がった

(人肌が1番あったかい)

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