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□☆煌星
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深夜、もう日が変わる時間帯にも関わらずやたらと目が冴えてピオニーはベッドから体を起こす。それから床を見やれば七匹のブウサギ達はすっかり夢の国らしく、ぴぎーと笑いを誘いそうないびきをかいていた。その反対側、窓を見れば夜にも関わらず眩しいくらいに輝く夜空。
「道理で眠れん筈だ」
今日は新月。月は隠れきっている。明るいのは夜空一杯に散りばめられた零れんばかりの星達。だがふと違和感を感じる。何に対して、と具体的に判るわけではない。ただ何かに呼ばれているような感じがピオニーにまとわりつく。
「…少しなら構わんか」
傍に無造作に放られた上着を着てからベッドから降りる。ブウサギ達を踏まないように足元に気を配りながら寝室を抜ける。
私室の外に控えているであろう見張りの兵の目を盗むのは面倒だと思いすぐ傍の窓へ手をかけた。ガタリとガラスを開ければひやりと冷たい空気が頬を撫でる。まだ冬にはならないが秋の深夜は空気がやたら冷えて感じる。それはこのグランコクマが北に位置する国だからだろうが。あまりの気温の低さにベッドの温度が恋しくなるが夜空の星を見ると戻る気にはなれない。やはり呼ばれている、という気になる。しっかり耳を澄ませた所で呼び声も、自然の風すら息を潜めていて音という音は一切しない。
「面白いじゃないか」
ピオニーはただ純粋に好奇心と胸の高鳴りに背中を押されて窓枠に軽く手を添えて飛び出す。
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