廻る魂達の重奏曲2

□♪☆吹き抜ける風、意味するものは
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放課後、高等部3年の教室。

散り散りになる学生達。の中で一緒にいたピオニーとジェイドに近づくゼロスは、なぁなぁと呼び掛ける。
「今日は生徒会の用事ないんだよな〜?」
確認を取りに来たゼロスに頷いたのはピオニー。
「ああ。今日はなしだ」
「お好きな所に行けますよ?」
まともに答えたピオニーとは反対に、くすくす笑うジェイドはどこか意味深な笑顔を向けながら続けた。
「おーよ、俺さまは今からマイハニーのとこに行くし〜。じゃーな〜」
そんな軽い嫌みもものともせずゼロスはそれだけ残し、足取りも軽く、歌を口ずさむ程上機嫌で教室を出ていった。
「おーおー、羨ましいねぇ」
「ユーリか」
ゼロスが去った後に近づいてきたのはユーリ。
「僕もいるけれどね」
「おや、連日敗北者のフレンではないですか」
ピオニーの呼び掛けが単品だった事に不満があるのか、やや不貞腐れたようにユーリの後ろから顔を出したのはフレンだった。それに対して即座にジェイドはそう返してにやりと笑った。
「明日こそは、君を授業に出してみせるさ。ほら行くよ、ユーリ」
「ってなわけで、オレは野郎とデートなんでな。先に帰るわ」
からかいの笑顔を浮かべるジェイドに、ビシッと指先を突きつけたフレンははっきりと言い切ると、さっさと教室を後にする。そんなフレンにうんざりしたように項垂れたユーリも諦めたのか、ピオニーとジェイドにそれぞれ軽く手を振るとフレンの後に出ていく。
「さて、俺は部活に顔を出すが…。お前はどうする?」
ピオニーは後ろ手に武道場のある方へ親指を向け、ジェイドへ尋ねる。鞄へ教科書を入れ終えたジェイドは立ち上がると椅子を片付けながら、そうですねと呟く。
「少し寄りたい場所があるもので。先に帰らせてもらいます」
「ん、わかった。俺もなるべく早く帰るから」
ジェイドに頷いたピオニーは人目を忍び、こつんと軽く額同士を合わせると教室の出口まで向かう。
「気を付けろよ」
ひらひらと手を振るピオニーへにっこりと笑い返すと、ジェイドも帰宅の為に教室を出るのだった。



「さて、用事も済んだことですし」
少し咳き込みながら片手に持った本の表紙を見ながらジェイドは少しゆっくりとした足取りで本屋を後にしていた。
「……あれは」
ふと視界に入った人の服を見るなりジェイドは顔を険しくした。以前ジェイドに絡み、アスベル達が撃退した不良達だった。
「関わらない方が良さそうですね」
彼らから目を背け、側の小路に足を踏み入れた時だった。もう一人の男が待ち構えていた。その手に握られていたのは、
「………くっ」




その時私は刺された。名も知らぬ輩に。恨みを買うような事は恐らく何度もしているが、刺されたのは初めてだった。抵抗が出来なかったわけでもない。ただし彼らが"包丁"を使い、私の発作のタイミングを狙っていたのだろう。薄れ行く意識の中でただ二つの声をぼんやりと聞いていた。
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