廻る魂達の重奏曲2

□♪新部員勧誘
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中等部図書室。
「何あたし達の図書室を拠点にしてんのよ」
カウンターに座って本を読んでいたリタが不服そうに言った。
「別にいいでしょう?この図書室の主は誰だと思っていますか?失念しては駄目ですよ。この図書室の委員長は………」
「もうわかったから!」
リタへ詰め寄ったイオンは結果的にリタを黙らせる事に成功した。
「それより問題は彼が楽しんで部活を出来るかが問題なんじゃないかな?」
「確かに強制しては迷惑な話ね。そんなの私も嫌よ」
リチャードとジュディスに加え、向かいには一席が空いており、シンクが座っていた。
「まあ、やりたくないんだったらともかくそれでも勧誘するだけしてみてもいいと思うけど?」
「それはいい案だね」
シンクの案にリチャードは同意した。ジュディスも頷く。
「じゃあボクに任せてよ。同年代に近い方が向こうも接しやすいし」
解散だね、と言ってシンクは手を振ってさっさと出ていった。そんな様子を見るなり、リチャードとジュディスは苦笑いをした。すると図書委員を解散させたイオンが二人の前に立った。
「とりあえず彼へは僕が話を通してあります。家をメモした地図もありますから一度会ってあげてくれますか?」
メモ、と呼ばれる紙はノートを切り取ったぐらいの大きさだったが、それでも有無を言わせないようなイオンの言葉に二人は頷いた。



「さて、ここかな?」
イオンに渡された紙を見ながら家を前にしたリチャードは空を仰いだ。夕暮れに近い状態だった。
「両親にも連絡はとってあるから大丈夫だけど」
家のインターホンを押して待っていると中から赤い髪の女の子がひょっこりと顔を出していた。
「だれ?」
「きみ達の学校の高等部2年生リチャードって言うんだ。イオンから話は通ってる筈だけどカイウスくんはいるかな?」
手短に内容を説明したリチャードは返答を待つために出来る限り優しい表情で待った。すると、
「ようはカイウスね。ちょっと待ってください」
赤い髪の女の子が中に入っていくなりカイウス〜!、と大声で呼ぶ声がした。
「イオン委員長からは話を聞いてるからそろそろかと思ってました」
「ああ、ルキウス。いつも図書室を使わせてもらってすまないね」
入れ代わるように顔を出したルキウスに図書室を陸上部の拠点として使っている事をリチャードは簡単に謝罪した。
「それはいいです。それよりカイウス兄さんは多分暇だからアーリアやティルキスが帰ってくるまでは夕食は食べないので。あとリチャード先輩なら大丈夫だと思うけど兄さんが不定の輩に襲われないように」
「わかっているよ」
ルキウスの言いつけに頷いたリチャードはルキウスの頭を優しく撫でた。
「守るよ。僕も能力者を利用する側は嫌いだからね」
「おーい!」
そんな二人に割り込むように入ってきたのは当の本人であるカイウスだった。
「来たね。ちょっと離れた公園で話をしたいから一緒に来ないかい?」
「オレが?」
自分を指差して聞き返したカイウスにリチャードもルキウスも頷いた。
「うん。先輩が迷惑じゃないんだったらいいかな?」
「よし。じゃあ行こうか」
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