廻る魂達の重奏曲2

□♪連鎖は続くもの
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中等部中庭。
剣道部の練習がなく、あまりする事のなかったルークは木に背中を預け、旋律を繋いだ。それが終わるなりパチパチと手を叩く音がした。
「剣道部には勿体ないぐらい上手いわ」
そんな誉め言葉を言っていたのはルークと同じ中等部3年のティアだった。
「これなら剣道部に行く前に合唱部にお招きするべきだったかしら………」
「そんな合唱部に行ける程上手くないよ」
惜しいように空を見たティアにルークは両手を振って謙遜するようにした。
「それよりティアはここに何か用があったのか?」
訊ねたルークにティアは首を横に振った。
「私もそんなに忙しくなかったから」
「そっか。ならちょっと話でもしないか?最近ティアと話したくても話せなかった事多いし」
少し微笑むようにしてルークは近くにあったベンチを指差した。
「さすがに地べたはないからなぁ。どこかに座った方が話も弾むし」
一緒に歩いて二人はベンチに腰かけた。
「にしても、さ。ティアも前みたいにお堅いと言うかその部分が取れたよな?」
「そうかしら。周りからはクール〜、と言われるわ」
「それでもわかるんだ。素直になったというかさ。俺がティアを語るなんてしちゃ駄目なんだろうけど」
あはは、と笑ってルークはさらっと言いのけた。そんな素直なルークにティアも僅かに赤くなっていた。
「そんな事ないわ。あなたが私を語るのは別に駄目なわけじゃない。それに……」
「……それに?」
言葉を濁したティアにただ純粋な子供のように首を傾げてルークは訊ねた。
「軍人としての考え方が必要なくなったのも理由の一つかもしれない」
「そうだよな。だってさ」
ルークは鞄の中からゲームセンターで取れそうなストラップを取り出した。すると面白いようにティアが食いつき、それを欲しそうに眺めていた。
「ティアは相変わらずキャッチャーは苦手なのか?」
そう訊ねるとティアは黙って頷いた。そんな様子にルークも同じように頷いた。
「実は、さ。俺もあんまりこういうの得意じゃないんだよな。ロイドといる時に偶然取れたんだ」
「そ、そうなの」
貰うわけにもいかないと思ったティアは物惜しげにして空を仰いだ。
「ほらよ」
ルークはティアの膝の上に持っていたクマのストラップを乗せた。
「……いいの?」
「同じの持ってるんだ。お揃いでいいならだけど」
「あ、ありがとう」
顔を赤く染めながらもお礼を言ってティアはクマのストラップを手にとった。
「ティアが……ほら、可愛いの好きだろ?だから」
「う、うん」
だんだん声が小さくなっていくルークとティアの二人の雰囲気を邪魔するかのように二階から二人の学生がルークの名を叫びながら飛び降りてきた。
「ルークー!」
しっかりと着地まで決めて二人を見上げたのはロイドとカイウスであった。
「先週配られた数学の宿題プリントできてるか!?」
ティアがあれね、みたいな顔をしていた隣でルークはにこやかな顔をしていた。そして大きく手を上げ、
「忘れてた〜!!」
バツ印を書くように両手をクロスさせた。
「えぇー!」
「ルークも駄目なのかよ!」
ロイドが頭を抱え、その隣でも同じようにカイウスが悲鳴を上げた。
「やばいって!あと一日しかないのに!」
「五枚組の数学プリントなんてわかるか!」
その後は教師に言うような愚痴を言い始めた。
「絶望だなぁ、カイウス」
「ははっ。何かすっげぇ昔の記憶から父さんがにこやかに手を振ってる〜」
更には学校の壁の片隅に移動して膝を抱えていた。
「なあ。ティアは出来てるよな〜?」
「ええ。しっかり配られた日に終わらせたわ」
「写すのは……」
「駄目よ。自分の力でしっかりやらなきゃ」
「だよな〜」
ふらふらとルークもロイドとカイウスのように座り始めた。そんな三人を見るなりティアは焦って首を横に振った。
「で、でも今日居残って教えてあげることは」
「出来るのか!?」
座った筈のルークが猛烈な勢いでティアの前まで走ってきた。
「教えるのは苦手じゃないし」
「是非とも!」
「頼むよ!」
ティアの言葉にカイウスとロイドもルーク同様、瞬間的に距離を詰めてティアに土下座していた。



その後四人は図書室に居残って数学の勉強に向き合っていたのを苦笑しているアリエッタを始め、呆れているリタ、兄の無能さにため息をついたルキウスが四人を見守っていた。

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