廻る魂達の重奏曲2

□♪過去(むかし)と違うから
1ページ/2ページ


放課後校門前。
「あ、アッシュ」
鞄を持ってアッシュを呼ぶ人物はアリエッタだった。そんな小さい姿にアッシュも小さく手を振り返した。
「ガイに俺の剣道部の休みを取らせたのはアリエッタだったのか」
「……ごめんなさい」
微かに呟くとそれが聞こえていたのかアリエッタが頭を下げていた。
「いや、いいんだ。練習ばっかりだといつか体が駄目になる」
すまん、と言ってアリエッタの頭を撫でた。そうするとアリエッタは照れたように笑顔を浮かべていた。
「あのね、今日は帰り道に寄ろうと思ってたところがあるの。ついてきてくれる?」
そう首を傾げて訊ねられれば無下に断ることも出来ずアッシュは頷いていた。
「あとアッシュとお話しもしたいの」
「……?俺とか?」
自分を指差して訊ねてみればアリエッタはただしっかりと頷いていた。
「珍しいな。アリエッタの方から来るのも。それにあんまり他の奴らに構っているとシンクが拗ねないか?」
「大丈夫だよ。シンクならリチャード先輩やジュディス先輩の他にもたくさんの陸上部の人がいるから」
行こう?と言われて手を引かれた。



そして着いた場所は学校に近い公園だった。
「アッシュ知ってる?ここから見える夕日ってすごく綺麗なの」
笑って言うアリエッタに並んで太陽を見た。雲一つない快晴だった。
「あのね。ジェイド先輩に協力してるのは信用ならないって言ってしまった負い目なの?」
「違う。そうじゃない!」
率直に訊ねたアリエッタにすぐにアッシュは返していた。しかし言ったあとに俯いた。
「私の感じたことだけどね。ジェイド先輩はたぶん負い目で行動されるのは嫌だと思うの」
ブランコに座ってアリエッタは呟くように言った。
「だから今日はアッシュと話したかったの。前の……、私の話も全然聞いてくれなかったアッシュじゃない今のアッシュと……」
「前の俺か………」
今より優しげな表情をして空を見上げた。まだ青い空が支配していた。
「負い目かもしれない。だが今のジェイドを俺はもっと知りたい。だから協力するのかもしれない。一度は信用ならないと言った俺を受け入れ、病弱な事まで明かしてくれたジェイドに俺は救われた。その恩は一緒にいることで返せそうな気がするんだ」
少し苦笑いをしてアリエッタにそう返した。するとアリエッタは予想していたかのようにブランコを降りていた。
「今のアッシュはシンクが嫌い?」
「……腐れ縁は認める」
「ヒューバート先輩は?」
「嫌い……じゃない。喧嘩友達みたいなものか?」
「そっか……」
アリエッタの訊ねた内容がよくわからずアッシュは首を傾げていた。
「アッシュは堅すぎるのかもしれないよ。理由はいるけど仲良しになりたい、とかもっと単純なものでいいと思うの」
「単純なものか」
ボーッとしたように呟いたアッシュは何気なく空をまた見上げていた。まだまだ空は青い。だが遠くから聞こえた声に厳しい顔をしてアリエッタの方を向いた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ