異界の扉

□♪三大馬鹿の悲劇
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川下の辺りの岩場にクラトス、ラルゴ、ヴァンが集まっていた。
「ティアに何をしても振り向いてもらえん」
「メリルもアッシュに付きっきり。俺だってメリルが婚約者という立場はわかっているのだが」
「いつまでも呼び捨てばかり。しっかり[父さん]と呼んではもらえないのだろうか」
親馬鹿二人+兄馬鹿一人の回りから見れば三大馬鹿発言をしている。
「やはり焦ってはならないのだろうか」
とヴァン。
「だがそうこうしている間にメリルは奴と結婚してしまう」
とラルゴ。
「ならば暗殺をするのはいい手ではないか?」
「それではメリルが自殺してしまう」
クラトスの提案を無理だとラルゴは断った。
「ならばアッシュを人質にナタリア姫を呼び出す作戦はどうだ?」
「やってみなければわからんが……」
「ならばやってみてはどうだ?ナタリア王女に振り向いてほしいのなら何事も挑戦だと思うが」
ヴァンの提案を考えていたラルゴにクラトスは後押しする言葉を言った。
「だがアッシュは単独でもかなりの戦力を持つのだがどうすれば」
悩むラルゴにクラトスとヴァンが親指をたてる。
「私はこれでも神託の盾騎士団主席総長だぞ」
「以前はクルシスの四大天使の一人、人は私を大天使と呼んでいたが」
「そうか……、なら頼んでいいか?無論俺も参戦するがな」
ここに三人が手を取り合って計画を進めた。


「軽薄野郎とか言ってた奴が俺さまを連れてきて何考えてんだよ」
愚痴を言いながらゼロスはアッシュに呼ばれるがままついていっていた。
「いろんな情報に通じてそうだから単刀直入に訊く。最近クラトスの行動が怪しくないか?」
「あ?あのロイドくんを毎度ストーキングしてる親馬鹿か?」
「ああ。ラルゴとヴァンの行動も怪しいんだ。あの三大馬鹿が揃うと、な」
腕を組んでアッシュがゼロスに言う。


一方アッシュとゼロスに近い林の中。
「まさかあの者までいるとはな」
ヴァンは静かに呟いた。
「神子がいると、こちら側から仕掛けるのは不利か」
「私ですか?」
クラトスの神子発言に背後からコレットが訊ねた。
「シルヴァラントの神子か。静かにしてもらおう」
「え?だけど……」
「静かに従ってもらうぞ」
大人二人の圧力にコレットはただ頷くしかできなかった。
「二人が離れるつもりがないなら私に策がある」
「その策は?」
「私が二人の間にグランドダッシャーを放つ。そこで二人が分断されたところをこちらからすぐさま強襲をかける」
「ならば気付いていない今がいいのでは?」
様子を見ながらもクラトスが提案する。
「始めていいのか?」
「私は構わないが」
「ならばいくぞ。グランドダッシャー」
小声でヴァンがアッシュとゼロスに向けて術を放った。光の亀裂が二人を分けるように走る。
「逃げろ!」
「言われなくったってわーってるよ!」
アッシュとゼロスが飛び退くと同時に光の亀裂から大地が隆起した。
「ったく!危ねーなー!てめぇ誰だ!」
振り返る時にゼロスは怒鳴り付ける。
「グレイブ!」
「うおっ!」
ゼロスの足下から岩が槍のように突き出る。それを華麗にゼロスは飛んでかわす。
「エアスラスト!サンダーブレード!」
「あーくそっ!」
真空の刃に雷の刃がゼロスを追撃した。だがそれも空中で後ろに退いて避ける。
「イラプション!」
「親馬鹿と遊んでる暇はねーんだよ!」
羽を出して小規模の噴火から逃れる。
「輝く御名の元、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん。安息に眠れ、この親馬鹿が!ジャッジメント!」
「輝く御名の元、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん。安息に眠れ、テセアラの神子よ。ジャッジメント」
微妙に詠唱を変えながらも二人は最高の魔術を放った。


「すまんがラルゴのために人質になってくれんか?」
「断る、と言ったらどうする?」
「力ずくでも人質になってもらうだけだ!」
ヴァンが剣を抜く。アッシュも即座に剣を抜いた。
「俺を人質にできるのか?例え剣を教えた師でも考えればわかるだろう」
「ふっ。こちらはいつでも有利に進められるようにしてあるのだ」
アッシュが見えるようにヴァンはコレットに剣を向けた。
「……汚いな」
「ふっ。何とでも言え」
「御元に仕える事を許したまえ。響けんそうれ……」
アッシュを支援しようとホーリーソングを詠唱していたコレットだが、明らかに間違えた詠唱をしていた。
「あ、間違えちゃった。失敗失敗♪」
辺りの空気がだんだん重くなっていく。
「……あれ?」
裁きの光、ジャッジメントと味方強化のホーリーソングが辺り構わず発動した。予想外の攻撃にヴァンとクラトスは直撃、アッシュとゼロスにも直撃したかのように見えたがコレットが味方だと思っていたため難を逃れた。
「ごめんなさい!」
コレットが謝っている脇でジャッジメントで潰れた馬鹿二人をゼロスは見下した。
「んで。あんたら二人で俺さまたちを攻撃して、ただでは帰さないぜぇ」
「それ相当な事はしないとこっちの気がすまないからな」
アッシュも見下して吐き捨てた。
「つーわけで。コレットちゃんは退場してくんないかな〜?」
「え?あ、うん」
ゼロスはコレットをその場が見えない場所まで連れて行った。その後すぐさま戻ってきた。
「輝く御名の元、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん。安息に眠れ、罪深き者よ」
「雷雲よ。我が刃となりて敵を貫け!」
「よ、よせ」
ヴァンとクラトスは二人に制止の言葉をかけたが、
「ジャッジメント!」
「サンダーブレード!」
その日ヴァンとクラトスの二人の姿を見た者はいなかった。三大馬鹿は学んだのか表立って行動は起こさず、コレットからは遠ざかっていた。


三大馬鹿内標語

 『天然には関わるな』

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