新帝国建立祭

□聖夜の誓い 後編
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ルナリデーカン・イフリート・24の日。
遂にクリスマスイブがやってきた。休みという形のルークは夕刻6時のパーティ開始まで事情を知っているガイが街へ誘導してくれる手筈になっている。宮殿の兵達が朝からピオニーがいないと言い歩いているのが気になったがジェイドは予定通りダンスホールへ向かう事にした。
「…やりますね」
入ってすぐ眼前に広がった光景にジェイドは感嘆の声をあげた。きらびやかなイルミネーションの数々。それは子供が喜びそうなものであったけれど上級貴族の家でもここまでやるかと思う程の素晴らしさだとわかる。
「そうでしょうそうでしょう!素晴らしいでしょう!さあ褒め称えなさい!」
「そこまで言ってません」
勝手に陶酔に浸っているサフィールを蹴り飛ばす。床に這いつくばりながらギャーギャー騒ぐサフィールの背中に乗り上げながら届く飾りに触れる。
「これは…」
「気付いたようですね」
ふっふっふっと得意気に笑いながらでも床に這っていては格好がつかない。しかしわかっていて尚、ジェイドに降りる気もなかった。
「ガラクタを集めてきたのですか」
飾られている装飾品の数々は元は塵扱いされて捨てられていたようなものばかり。それを良く見なければ気が付かない程綺麗に加工してしまうのだからさすがは譜業のネイス博士。
「器用ですねぇ。ルークが喜びますよ」
もう一踏みしてからトン、と優雅に床に降りる。「ぐえっ」と潰れた蛙のような声をあげてからサフィールは立ち上がる。眼鏡が割れていないか確かめているサフィールを振り返りジェイドは傍へ近付く。
「な、なんです。どこか不備でも……☆△※◎□○!?」
語尾が不自然につり上がり、それ以前に最早言葉になっていない。いきなりジェイドに微笑まれよしよしと頭を撫でられた反応がこれである。
「じ、じぇいど!?」
「ん?ご褒美ですよ♪」
思わず尻餅をついたサフィールを見下ろしそういえば、彼は何を思ったかいきなり足取りも軽く出ていった。それを見送りながらジェイドは軽く眼鏡を押し上げ、先程とはまるで違う黒い笑みを口元に浮かべた。
「飴と鞭は使いよう、ですよ…」
底意地の悪さは超一流だった。だがゴーン、と1時を知らせる鐘の音を聞き顔をあげる。
「おや、そろそろ導師のご到着ですか。港までお迎えに上がらなければ」
もう一度綺麗な会場を見回してから宮殿を後にする。
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