短編集

□♪真実のトビラ
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「今日で導師守護役アリエッタを解任します」
「え?」
「神託の盾の一人として働いてください」
「イオン様!」
私は叫んでた。一度だけではなく二度も突き放されたから。
「行きましょう、アニス」
「でも、アリエッタが」
「いいんです」
「行かないで、イオン様」
どれだけ手を伸ばしても届かない。それにどんどん距離が開く。
「いやだよ。行かないで」
泣いても泣いても、目の前の視界から二つの影が消えていく。
「いやあああぁぁぁ!!」


私はベッドから跳ね起きるかのように起きてた。
「ゆ…め?」
回りを見てみると驚いたアニスとシンクがいた。
「うなされてたけど、大丈夫?」
「びっくりさせないでよね。こっちはまだ寝起きなんだから」
二人ともまた横になった。
「ごめんなさい」
謝ってから私はベッドを降り、着替えてダアトの教会の中を歩いた。神託の盾の人たちの数もまだ少ない。詠師の人がいたから私は挨拶した。
「おはようございます!」
「静かに。まだ寝てる人もいるんですよ」
「あ。忘れてた」
「おはよう。それにしても今日は随分と早いね」
「夢にうなされてしまって」
「正夢にならない事を祈りたいよね」
そのまま詠師は去っていってしまった。
「そうだ」
イオン様の私室に行こうと私は譜陣の部屋へ向かった。相変わらずこの部屋の冷気が私の体を震わせる。
「えっと。ユリアの御霊は導師と共に」
私の入っている中の譜陣が輝き、四階まで運んでくれた。そこから向かって右の扉を開けて長い廊下を歩いた。
「イオン様、起きてるかな?寝ていたら迷惑だし」
扉に手をかけ、悩んでいた。そうしたら扉が開いて、私は倒れそうになった。
「やっぱり、アリエッタでしたか」
「イオン様。あの、私」
「寒いでしょう。中に入りますか?」
「はい」
イオン様に誘われるように私室に入った。
「こんな早い時間にどうかしましたか?」
「嫌な夢を見てしまって」
進められた椅子に座って、何かを書いているイオン様を見た。
「疲れているのでしょう。最近僕がアリエッタを導師守護役に任命したから」
「そんな事ないです!私はイオン様の導師守護役をしていて嬉しいです」
イオン様が辛い顔をしていたから私は椅子から立ち上がっていた。
「やはりアリエッタはアリエッタのしたい事をしたいですよね」
「解任…、ですか?」
だんだん心細くなってきた。朝に会ったあの詠師の言葉通りになったら。
"正夢にならない事を祈りたいよね"
私はその場に頭を抱えて蹲った。
「イオン様が私を、解任?いや!そんなの、そんなの!」
「アリエッタ?」
「いやです!いや。私、また独りぼっちなの?前みたいに六神将に入れられて。また、暗い底に落とされて!」
「落ち着いてください。僕の話を聞いてください」
「イ…オン…様?」
私は私の肩を支えてくれているイオン様を見た。いつも微笑んでくれているイオン様だ。
「あまり詳しい話をしていませんでしたよね。アニスは」
「うん。詳しい話はイオン様に訊いてって」
「どの辺りまで聞いていますか?」
「イオン様を奪ってないってところ」
イオン様が辛い顔をしている?私、悪い事を言った?
「僕は導師イオンのレプリカです」
「レプリ…カ?」
「そうです。僕は七番目のレプリカ。シンクは五番目のレプリカです」
「シンクも?じゃあ被験者のイオン様は?」
「早めに告げたかったのですが、あなたが僕の導師守護役を解任された段階で病死…、されました」
「私が慕っていたイオン様はもう」
「すみません」
「ううん。イオン様が謝る事なんてない」
頭を下げていたイオン様に私は抱きついた。
「レプリカでも僕の導師守護役でいてくれるのですか?」
「はい。今度こそ護ります。あなたの、導師イオンの導師守護役として」
「ありがとう、アリエッタ。信頼しています。シンクにも優しくしてください」
「私こそお願いします。イオン様」
私はもっと強く抱いた。嬉しくて。
(私の導師守護役の仕事は今からだよね)


おまけ
「イオン様。書類の追加にって何やってんの!」
「あ、アニス。来たんだ」
「アニス。これには訳があって」
「イオン様。最低ですよぅ!シンクに言ってやる!」
シンクも屋根を突き破って降りてきた。どうしよ。
「聞いてたよ。へぇー。あんたにもそんな趣味があったんだ。面白い光景を見ちゃったな」
「行こっか、シンク」
「そうだね」
二人が出てった、けど。
「イオン様!どうしよう!」
「どうにもなりません。成り行きに任せましょう」

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