短編集

□☆Crying
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幼い頃、故郷では魔物を殺し、解剖、実験。使い終われば『用済み』だと棄てていた。

わからなかった。

『死』という感情。

何を意味し、示す事柄なのかを『理解』はしている。だけれど。
何故人は『哀しむ』のか。

何故『泣く』のか。

わからない、わからない。

この世に生まれ落ちた時から死へと導かれる事が定められているというのに。
生と死は常に背中合わせだというのに。
恩師をこの手で殺めても、私は泣かなかった。涙など流さなかった。それどころかその瀕死の体さえも無表情で実験体にしようとした。
未だ、12の子供だったのに。

僕は泣かないのか――

僕は泣けないのか――

血に塗れた感情の無い悪魔が尋ねれば、人は恐れをなして逃げていく。親も、関係なかった。

太陽に聞いてみた。
そうすればあいつは黙って抱き締めてきた。


程無くして才能を買われて養子に行く為故郷を後にした。
バルフォアからカーティスに。けれど悪魔から人へはなれなかった。
年月を重ね、軍属へ入り、作り笑いを覚えた。戦へ出れば、笑顔で死体の山を作り、持ち帰り実験材料にする。血に染まり、人徳を犯す研究を続け、

悪魔は人になるどころか、『死霊使い』になった―。
そんな中、太陽がやって来た。皇帝となった太陽。
陽は諦める事なく私を照らしに来た。
陽の光は暖かく、諭されるのは癪だったが、やってはいけない事を理解する事は出来た。
残酷な研究を廃棄し、彼に全てを捧げた。
照らされている内に、人になれた気がした。
けれど…。
第三師団という一つの隊を預かり、今日も部下が何人も消えた。

泣けなかった。殉職者の慰霊碑の前でも笑顔を崩さなかった。

哀しいのかも、やはり哀しむという事すらわからなかった。
だから、尋ねた。
私は、笑っていた筈だ。

「私は、泣けないのですか?私は、泣かないのですか?それとも人になる事を許されないのですか?」

そうすれば太陽はあの時のように抱き締めてきた。

「馬鹿だな。何言ってんだ。…お前は今泣いてるだろ」

強くなくていいと言った。
弱くていいと言った。

わけがわからないと返せば、取り敢えず苦しかったら俺の所へ来いと言った。


 『死』や『哀しむ』『泣く』という行為は良く分からないけれど、暖かく照らす太陽を『失いたくない』と思った。
ああ、あの時は笑えていなかったのかも知れない―。太陽の元では自分を作る必要がないから。


【He's laughing on the outside and crying】
〜顔で笑って心で泣いている〜




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