短編集

□☆しりとり
1ページ/1ページ

    しりとり
旅をしますはルーク様御一行。どんな話の流れでそうなったかはさておき、ルークはそんな遊びに興味を持った。
「そうか、教えなかったからな。知らないのか」
夕食後、野宿の為森の中で焚き火を囲んでいるのだが、食後のコーヒーをたしなみながらガイが言う。
「子供の遊びよ」
素っ気なく言うところはさすがティアだ。しかし一度しってしまえば七歳児のルークはやりたくて仕方がないと言わんばかりにガイやアニスへ声をかける。
「なぁ、やってみたい!やろうぜ、みんな!」
「ま、そこまで言うなら付き合うぜ」
「あたしもいいよ〜。ただし強いからね〜♪」
「私も参加しますわ、大人数の方が楽しいに決まっていますもの!」
ガイ、アニス、ナタリアは了承する。
「私はいいわ」
ティアは呆れたと言う風に肩を竦めて言い放つ。
「おいおい、付き合ってやろうぜ」
ルークの保護者、ガイは背中を向けてしまったティアへ苦笑いしながらそういう。それでも頷かないティアにルークが呟いた。
「ティア。ティアもやろうぜ?どうしてもいやならいいけど…」
その表情は捨てられた子犬そのもの。さすがのティアもそれを突き飛ばすほど冷徹ではない。一つ小さくため息を零すと、了承の合図として頷いた。
「やった!」
ティアの参加に飛び上がって喜んだ後、ルークは思い出したように恐る恐る最強最大の壁を見た。
「嫌です♪」
<やっぱりだー!>
視線を感じただけで読んでいた小難しい本から目をあげ微笑み、却下したジェイドに全員が即座に叫んだ。
「ちなみに私に泣き落としは効きません」
ルークが言葉を発する前に全てを否定していく。
「頼むよ、ジェイド〜」
そう情けない声で言いながら軍服にすがり付くルークは本当にかまってほしい犬のようだ。
「仮に私がそのくだらない稚拙な遊びに参加したとして、貴方程度の頭で言葉の意味を理解できますか」
言われてしまえば全く以てその通りだ。この会話文が何かと漢字で構成される男が参加すればその意味を理解しきられるかなど、ガイにも怪しいところだった。
「うっ、それは…」
「うわー、いくらなんでも大佐大人げな…」
「なんですか?アニスー?」
半泣きしかけなルークを庇うようアニスが声をあげればそれはもう綺麗な天使のような悪魔の微笑みが返った。即座にアニスがナタリアを盾に隠れたのは言うまでもない。
「ルーク、悪いことは言わないから(さすがに)旦那は諦めろ」
口で言葉で勝てるわけがないと思っているガイはなんとかジェイドを参加させないようにルークの説得を試みる。例えば罰ゲームの一貫として投薬実験などお断りだからだ。
「けれどしりとりに意味を理解しなければならないというルールはありませんわよ、ジェイド?」
ナタリアの天然フォロー。さすがは空気や状況関係なしの我が道を行く天然娘の成せる業だ。謀らずしての攻撃にはジェイドも文句は言えなかった。
「そうですね…。では参加しましょうか」
そういって読みかけの本を閉じたジェイドが妖しげな楽しげな笑みを浮かべたのを見ていた人はいなかった。そして、ガイの予想は的中するのだ。
「じゃあ『しりとり』」
ルークの開始からガイへ行く。
「なんでもアリか?『リフレックス』っと」
ガイからティアへ。
「ガイの鎧ね。じゃあ『ストーンボトル』」
ティアからアニスへ。
「アイテムって、ティアらしい〜。じゃ『ルビー』!1万ガルド〜♪」
アニスからナタリアへ。
「意地汚いことですわよ、アニス。まあいいですわ。では『イフリート』」
ナタリアからジェイドへ。
「第五音素の集合体とはまた難しい。ナタリアは博識ですね。そうですねぇ…、『冬虫夏草』♪」
ジェイドからルークへ。
「ジェイドらしいって言えばらしいけど。敢えてそう来るのかよ…。えっと、う、か。『ウォントの切り身』」
「いや、ルーク…。丁寧にアイテム名にしなくてもウォントでいいんだぞ?まぁ、じゃ、食物繋がりで『ミソ』」「『ソードメイス』。私とアニスのロッドにしたわ」
「す?す、は以外にお金になるもの多いんだよね〜。13980ガルドの『ストライクイーグル』♪」
「私の武器を変な目で見るのはおよしなさい。全く『ルナティート』」
「響律符(キャパシティコア)ですか…。というよりまたと、なんですね。…『トカゲの化石』」
「だからなんでそんな不気味なもんなんだよ!き?『キュウリ』」
「ルーク。お前食いもんばっかだな。『リフレクトリング』」
「ぐ、ね。芸がないかもしれないけれど。杖ね、『グランドクロス』」
「じゃあティアに便乗して、『スターロッド』!」
「便乗したわけではなく、ガルドが高いからでしょう?『ドラゴンキラー』」
「そういいながら貴女も高価なものになっていますよ。『闇精の爪』」
「だーかーらー!なんでそんなんばっかなんだ、ジェイドは!いい意味のもん一つもねーじゃん!」
結局しりとりは一時間続き…。
「では私の勝ち、ということで、皆さんにはこれを飲んでいただきます♪」
予想通りの結果というかなんというか、勝者はジェイドで、特に決めてもいない罰ゲームが実施された。五人の前に差し出されたのは毒々しい色をした液体。
「こ、これは一体なんですの…?」
恐る恐るナタリアが尋ねる。そんなナタリア(他多数)へにっこりと笑顔で答えるジェイド。
「単刀直入に言いますと、滋養強壮剤です」
確かにそれだけ聞けば、聞こえはいい。しかし
「何使ったんだ…?」
一番聞きたくて、聞きたくないことを勇気を振り絞り尋ねるチャレンジャー、ルーク。
「それはですねぇ。冬虫夏草にトカゲの化石、闇精の爪、サソリの針、ケセドニアサボテンの汁、ヒカリゴケ。後は―」
<まだあるのかー!!!>
顔を青ざめさせた面々はごくりと唾を飲む。
「たきぎむしです♪」
「いやああぁぁあ!!」
その場から全員が一斉に逃げ出した。一人残されたジェイドはため息をついた。
「何故逃げるのでしょう。調合次第では良薬になるというのに」
知らないものには大ダメージなんですよ、と突っ込む人間は誰もいなかった。
―ちなみに材料は全てジェイドのしりとりの回答だった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ