雛見沢決戦編


□拾参
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◇信頼◇
信じれば応えてくれる奇跡
















どんなに不利な状況でも、諦めない。
仲間を信じることを知ったから。
信じれば、仲間達はその期待に応えてくれる。

幾多の世界、数多の時の中で後悔をした彼が、ボク達の大きな期待に応えてくれたことは、奇跡と言うには勿体無い、当たり前のことなのかもしれない。



山狗に扮していた赤坂は捕らわれていた梨花の肩をそっと抱き締めた。そしてその手が肩を離れる時もまた優しく。
背後から飛び掛かる山狗の隊員を打ち払う時には、その優しさに反した強さを秘めていた。

背後から飛び掛かった二人の顔面に振り返りもせず拳を叩き込み、五人もの山狗が小此木の合図で飛び掛かっても、今の赤坂の敵ではなかった。








「梨花ちゃんは伏せて」



「はいです…!」









ひとりの少女との五年振りの約束を守るために帰ってきた一人の男。
その約束は五年などという浅い月日では培えない重みがあることをボクはよく理解していた。
梨花自身もよく知っていただろう。
そして彼も、言葉にできない何かを理解していた。



これは百年にも勝る約束の誓い。
後悔を積み重ねてきた赤坂は、この日に帰ることができる奇跡をひたすら信じて、我が身を鍛え続けた。

そして、彼の強い意思が、そして奇跡を待ち続けた梨花の想いが、奇跡を起こす!!
一度しか起こらぬ奇跡が彼を、今この瞬間の雛見沢に間に合わせた!!









「ありがとう………っ!!」









まだ何も終わっていないのに、お礼の言葉が溢れた。
赤坂がこの場に帰って来てくれたことで、梨花がどんなに救われたか。
それを考えただけで涙まで零れてきそうだった。





最初の男は小此木が瞬きするのと同時に撃沈される。
組伏せようとする甘い考えが命取り…!
そんな甘えた隙を見逃すほど、この男は甘くないッ!!

男の後頭部に打ち込まれる手刀は、演舞で氷柱を叩き割り、何枚も重ね合わせた瓦を粉微塵にする威力を持った、最凶の一撃!!
とはいえ、普段の赤坂は相手を、そして自らを傷付けないために手加減をしていた。



その手加減を
赤坂は初弾から止めるッ!!

だから一撃で撃沈する。
地面に叩き付けられ
跳ね返って宙に浮くくらいに!!




鍛え上げられた無敵の拳が、小此木の次の瞬き、その次の瞬きの間に次々と山狗たちに叩き込まれていく。
………いずれも、一撃必殺。
それこそが空手の真髄の体現ッ!!
その威力を男の同僚たちはこう呼び、讃え、恐れた!!



その威力はまさに

徹甲弾!!!!
















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