雛見沢決戦編


□肆
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◇希望◇
反撃への不安と期待















ずっとずっと培ってきた。
ずっとずっと築き上げてきた。
望む未来のために、全力をかけてきた。



『信じる』というのは、希望≠ニいう名のコインを賭けることだと彼は例えた。
つまり、『信じる』ということはリスクを負うということ。

勝てば得るものがある代わりに、負ければ失うものがあるということ。
私たちは絶対勝てる勝負を探してコインを賭けようとする。だが、絶対勝てる勝負など存在しない。

時には勝ち、時には負ける。
そうしながら、希望というコインを増やしていくのだ。
だが、負けが込めば賭けるのが嫌になることもある。………そうして気付くのだ。
何も賭けなければ、何も失わないことに。



何も賭けないということは、何も信じないということ。
何も信じないということは、何も関わらないということ。
何も関わらないということは、いないのと同じ。

だから彼女は、“いなかった”。
胸の中に残るコインは最後の1枚。
それを失えば自分は消える。
賭けることに怯え続けた。

無意識の内にそれを賭けてしまわないように、あらゆる勝負に関わらないよう、逃げ続けた。
でも、ポーカーというゲームがそうであるように。降りることで失うコインがある。
最後のコインを失うまいとして、その最後のコインを緩慢に失おうとしていた。



彼女は知らなかった。
賭けるコインが多ければ多いほど、ゲームの勝率が上がるということを。
怯えれば怯えるほどに、目の前のゲームはいつも負け続けるということを。

勝てないゲームだからと参加しない。
コインを賭けようとしない。
それは間違っているのだ。

目の前のゲームは、一見勝てない勝負だ。
一見それを賭けるに値しない。
だがそれに賭けることで、加わることで、信じることで、勝敗は変わるかもしれないのだ。



何かを賭けるということは、何かを信じるということ。
何かを信じるということは、何かに関わるということ。
何かに関わるということは、いるということ。

だから彼女は、今こそ………“いた”。










『………僕はようやくわかりましたです。
何度繰り返しても、決して覆せぬこの運命は、あなたの強固な意思の力ゆえ』




「そうよ。強い意思は、運命を強固にする=B鋼のように鍛えられた運命は、如何なるサイコロの目にも動じない。それは即ち絶対の未来」



『……………それを、幾百年を生きる僕達ではなく人の身であるあなたが知るとは。………認めますです。あなたは限りなく、神に近い場所≠ノ居る』










譲らない。
何も譲らない。

意思の強さがある。
もう負けない。
ひとりじゃないから、負けられない。









『…………………………僕は、…あなたに負けない』










逃げない。
目の前のゲームから逃げるのはやめる。
逃げない。
もう見ているだけの傍観者もやめる。










『かつての僕たちは、どう戦ってもあなたに勝てないと思った。………でもあの子達は、気付きましたのです。信じる力が運命を切り開く奇跡を起こすと』










長い輪廻の旅を経て見つけた、答え。
強い意思が作り出す運命に、強い意思がそれを打ち破る奇跡を起こす。
人の世の法則。

思いの強さが願う未来を実現する。










『僕たちは、…あなたの意思の強さに負けないのです』










最後のコインを賭けよう。
あまりに非力な存在だけど、あまり出来ることは少ないけれど。

それでも、共に戦おう。
目の前にいる強固な意思の持ち主と。



仲間と共に、『仲間』たちと共に。















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