雛見沢決戦編
□壱
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◇相談◇
それは最善の方法
声が、聞こえた。
どこで前に聞いたことのある、小さな女の子の声だ。
とても長い間、眠っていた気がする。
それがいつの出来事で、夢か現実なのかはわからなかった。
小さな金髪の女の子。
誰かの面影がある、小さな女の子。
笑っていた。
笑っていたのに……………
「まったく世迷言ですな。雛見沢症候群?脳の寄生虫?実にユニークな内容でした。
あなたさえ良ければ、出版社の社長を紹介しますよ。大衆にはこれくらいの刺激があった方が受けるでしょうからな」
「この論文はお返ししますよ。もっとも、これを論文と呼んでいいなら、学会もどれだけ気楽なことか」
床に、手書きで文字の綴られた用紙が音を立てて落ち、何枚も散らばる。
それを踏みにじるように、部屋にいた人間達は立ち去ろうとした。
女の子の表情が、歪む。
「踏まないで…、踏まないで………ッ!!
おじいちゃんが頑張って書いたんだから、足で踏んだりしないで………ッ!!」
踏まないで、踏まないで……………
女の子の言葉は、その悲痛な叫びは、聞き入れられることはなかった。
悲しそうな表情を、何度も見たような気がする。
神に、運命に翻弄される彼女の姿を、何度も………、何度も……………
同じ運命を繰り返すの?
他人を蹴落とし、幸せを勝ち取るの?
未来をその強き意志で切り開くの?
―――――負けられない。
絶対に負けられないのはボクも、ボク達も同じだから。
あなたが自分の未来を決して譲らないように、ボク達も諦めたりしない。
必ず、運命を切り開いてみせるんだ。
「いつまでも眠っている場合じゃないわ。祭が、はじまるのだから」
この祭、勝つのはどちらだろう。
断固たる個人の意志か。
結束し合える仲間との絆か。
最終章の幕が上がる。
ボクは、ボク達は帰らなければならない。
「そうよ。さぁ、帰りましょう……………
私たちの故郷へ。ひぐらしのなく、6月の雛見沢村へ」
帰ろう、カケラと共に。
きっとみんなが力をかしてくれる。
ボク等は………、仲間だから。
暗闇の世界から希望の光を頼りに、ボクは再び目覚める。
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