罪滅しの物語


□弍拾玖
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真っ暗闇の世界に一筋の光が射した。
暗闇の世界を抜けたそこは、カケラになってしまった世界の集落。

いくつもの世界が煌めいた。
映り込む風景がその世界の表情を見せる。








「…………………………ねぇ、梨花」



「なぁに?」



「仲間の仲間って、仲間なのかな?」








不意に『鬼隠し編』のカケラを手に取り、梨花に聞いてみる。
梨花は傍にあった『綿流し編』と『目明し編』のカケラを手に取っていた。
そういえば、あの2つの世界はとてもよく似ていたなぁ。








「何なの、その早口言葉は」



「……………仲間は助け合う。なら、一人の仲間の大切な人達の為に力を貸すことは可能なこと?」



「………友達の友達はみんな友達ってわけね?そんなこと、その仲間同士の人間にもよるでしょ」








梨花は『綿流し編』と『目明し編』のカケラを手放し、次は『祟殺し編』のカケラを手に取った。

カケラに映り込んだ風景が、圭一と悟史を重ね合わせる沙都子の姿を映していた。
まだ出逢ったことのない2人。
いつか出逢う日が来ると、信じてる。








「……………仲間を通して新たな仲間と出逢い、助け合う。そんなことが、出来たらいいわね」



「ボクも、そう思うんだ」



「奇跡でも起きない限り、難しいでしょうけどね」








ボクは『鬼隠し編』のカケラを手放して、『暇潰し編』のカケラを手に取った。



【前の世界】で【再会】した、六道骸。
彼は無事なのだろうか?
結局ボクは運命を覆せずに、またこうして輪廻を廻っている。

真実を話さず【世界】を去ってしまった。
ボクはあの場所に、出逢った彼等に悲しみだけを残して来てしまった。
みんなボクのことを忘れただろうか?
忘れてくれれば悲しまずに済む。
みんなは、笑っているだろうか………?








「ボクは雛見沢の外で、ボクを『仲間』と呼んでくれる優しいヒト達と出逢ったよ。彼等にも同じことを言ったんだ」



「………それで」



「彼等なら、ボク等の運命を打ち破れると思った。でも………、彼等を巻き込むことはもう【前の世界】で終わりにする」








ボク等と彼等は違う。
彼等を惨劇に巻き込んではいけない。
わかっていたのに、わかっていたことなのに。ボクは彼等を巻き込もうとしていた。

もう【次の世界】で、彼等と出逢うことはないだろう。出逢っても、きっと関わらないほうがいいんだ。
ボク等は、違うのだから。








「ボクには、梨花やみんながいてくれる。それでいいんだよね」



「…………………………アンタがそう思うなら、それでいいんでしょう」








いいんだよ。
彼等はきっと、忘れている。
きっと悲しみを忘れて、笑っている。
なら、それでいいんだよ。

胸が締め付けられるように痛むのを、ボクは気のせいであると押し殺した。















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