罪滅しの物語
□弍拾玖
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◇終章◇
カケラは次の世界へ
そこはいつもの暗闇だった。
悲劇を、惨劇を回避したのにボクはここにいる。あぁ、またなのか。
また、運命を打ち破れなかった。
次の世界へと、ボク等は廻る。
悟ってしまった真実に思わず胸が締め付けられる。
今回、ボクは梨花と別行動を取り雛見沢を離れて、並盛に向かった。
そこで得たのは骸との過去の記憶。
そして私≠ニいう存在。
世界全体を見れば得たモノは多い。
ボク等は惨劇を打ち破ることができたのだから。圭一が奇跡を起こしてくれた。
それは梨花が殺されて、世界を廻る結果になってしまっても、まぎれもない事実。
『確かに圭一は、最悪の結果になる運命を変えましたのです。でも、それは梨花の死を覆したわけではありませんです』
「そうね。………でも、圭一には奇跡を起こすことのできる不思議な力がある。それに、【今回の世界】で圭一は過去の過ちを覚えていた」
彼という存在が、ひとつのカケラ。
まだ他にも運命を打ち破る方法が存在しているに違いない。
探さなければ、集めなければ。
運命を打ち破るためのカケラを。
「梨花が運命に立ち向かってくれたことがボクは何より嬉しく思う」
「……………私は、生きたいの」
「知ってるよ」
ボクも梨花に生きていて欲しい。
梨花に、笑っていて欲しいと望んでいる。
梨花だけじゃなく、みんなにも。
「梨花、ボクは次の世界でもカケラを探しに行くよ。君の傍にいることは出来ない。でも、信じてる」
梨花のこと。
みんなのこと。
運命は打ち破れるということを、遠く離れた場所から信じているよ。
何も言わないで黙っている梨花の方を見ると、珍しいものを見るような視線をボクに向けていた。
何か変なことを言っただろうか?
ボクが首を傾げていると、梨花はため息をもらした。
「……………アンタ、強くなったわね」
「弱いよ、ボクはまだまだ弱い」
ただヒトよりも立ち上がるのが早い。
それだけのこと。
痛いことは嫌いだから、早く治したい。
自分の弱いところも同じなんだ。
少しでも強くなりと思うから頑張れる。
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