罪滅しの物語
□弍拾漆
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獄寺達は乱闘を止めてテレビを見つめる。
綱吉もまた、静かにテレビを見つめた。
部屋の中はテレビから聞こえる音以外、何も聞こえない。
【「……………鹿骨市と周辺にお住まいの皆さんは、どうぞ冷静な対応をお願いいたします」】
何かのニュースが流れていた。
そこに映っているのはどこか田舎の風景。
画面下には『雛見沢村』というテロップが表示された。
【「繰り返しお伝え致します。本日未明、鹿骨市雛見沢村で大規模なガス災害が発生。死者・行方不明者が多数出ている模様です。現在のところ、生存者は見つかっておりません」】
『生存者は見つかっておりません』
ニュースキャスターの言葉が、無情に病室に響いた。
一夜にして滅んだ村。犠牲者は数千人。
何より綱吉達の耳に止まったのは………
『雛見沢』
それはつい先ほどまで話していた、笑顔が愛らしい少女の帰った故郷。
「なんだよ、これ」
「ガス災害………?」
「生存者は、いない……………」
テレビに映るのは実感の湧くことのない、残酷な現実を。その場にいる誰もが、受け入れることは出来なかった。
『雛見沢大災害』と呼ばれたそのガス災害は、真夜中に発生した火山性の有毒ガスにより村人2000人近くを巻き込んだガス災害と報じられた。
番組内では、雛見沢に代々奉られる『オヤシロさま』の『祟り』であると騒ぎ立てていた。
綱吉達は黙り込んでしまう。
「雛見沢村は自衛隊により封鎖され、状況を確認に行ける様子じゃねぇそうだ」
「じゃあ蒼唯は………!!」
「恐らく……………」
リボーンは帽子を深く被った。
『生存者は見つかっていない』
その言葉が意味するものは、彼女の死。
「そ、そんな………、ぁっ!!」
「ありがとう、さようなら……………
そして、ごめんなさい―――――」
「蒼唯は…、蒼唯は………!!」
蒼唯の悲しそうな表情。
彼女は、こうなることを知っていたとでも言うのだろうか?
彼女はわかっていて、故郷へ帰ったというのだろうか?
彼女を止めることが自分には出来たのに、助けることが出来たはずなのに………!!
綱吉の手から蒼唯から預かったトランプのケースが落ちていった。
床にトランプのカード、そして蒼唯が仲間と笑う写真が散らばった。
「10代目………!!」
「ぇ、ぁ…、手紙………?」
一緒に落ちたケースの底に、小さな封筒が貼り付けてられていた。
その中には、たった一通の手紙。
綱吉は周りを見回し、その封を切った。
それは、綴られる彼女の想い。
言えなかった言葉。
届くことを、彼女さえ望んでいなかった。
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