罪滅しの物語


□弍拾陸
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骸は床へと叩きつけられた。
捕まることよりも死を選ぶと言う骸に綱吉は目を背けた。








「俺に、そんなことは出来ない………」



「その甘さが命取りだ」








骸は綱吉の背後から手を押さえつけた。
もう動けないと油断していた綱吉は、腕を掴まれ身動きが取れない。








「何故、多くの刺客に君を狙わせたかわかりますか?」



「ぐっ」



「君の能力を、充分に引き出してから乗っ取るためだ。ご苦労でしたね」








骸は綱吉の体を壁に向かって投げ飛ばす。
その壁には骸の槍先。








「君はその下らぬ優しさで、自分を失くすのです」



『綱吉………!!』



「いけツナ。今こそ、]グローブの力を見せてやれ」








グローブの炎が、綱吉の体を支えるように噴射される。

オレンジ色の、あたたかな炎……………
羽入はその姿に彼≠重ね合わた。










≪『────の炎は、まるで燃える夕日のようなのですよ!』≫



≪「彼女も同じことを言っていた」≫










『(忘れていました…、僕でさえも忘れていましたのです。いえ…本当は、思い出すことをしなかっただけなのかもしれませんのです……………)』











羽入は目を附せた。
これも運命なのでしょうか?
出逢った時から結ばれた、千切れることのない縁なのでしょうか………?

彼等≠ヘ、再び廻り逢った。
出逢うことでまた世界が変わる。



綱吉の炎が骸の闘気を浄化した。
骸が意識を失うと同時に、壁に突き刺さっていた槍先は砕け散った。








「終わったな」








額の炎が消えると、綱吉はいつもの様子に戻った。敷地内に到着した医療班も、綱吉達のいる建物へと向かって来ている。

綱吉は心配そうに骸を見た。








「………死んでないよな?無事だよな?」



「ったく甘いな、お前は」








骸に近づく綱吉を制止したのは、血だらけになって倒れている犬と千種だった。
羽入はあまりに痛々しい2人の姿に制止をかけた。










『そんな怪我で無理をしてはなりませんのですよ………!!』



「っ!!お前なんだびょん!」



『あ、あぅあぅあぅ!!!!ぼ、僕のことが、見えていますのですか………?僕の声が、聞こえていますのですか?』










羽入は自分で叫んだことを慌てた。
それが周りに聞こえ、自分の姿が見えていることに何より驚いた。

どうして自分の姿が見えるのか。
雛見沢症候群に発症した人間に見える、聞こえる自分の存在が。
そう考えると、悲しくなってきた。










『雛見沢の外の【世界】にも……………
非道に廻る残酷な惨劇があるとでもいうのでしょうか』




「何、言ってるの………?」








羽入の言葉の意味がわからなかった。
羽入は悲しそうに俯いた。















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