罪滅しの物語


□弍拾伍
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ひぐらしの鳴き声が、静かに響いていた。
鳴き声が途切れることはなく、夜の静けさを優しく包み込んでいた。








「梨花の行動が、よくわからない」



「わからなくてもいい」








幼い2人の少女がいた。
2人とも長い髪で、1人はそれを青い紐で結わえている。いずれも幼く、小さな容姿の少女だった。









「こんなことをして………、赤坂に真実が伝わるのを遅らせて、忠告をして、本当に意味があるの?」



「……………わからないわ」








1人は手に鋏を持ち、公衆電話のコードを切断する。
もう1人は、ただその経過を、行動を何も感じないようにじっと見ている。








「……………ただ、今はこうして彼を真実から遠ざけたいの」



「偽善、だよ」



「アンタに言われなくないわ」








コードを切断し終わった少女は、鋏を手に立ち上がると、別の電話ボックスへと駆けて行った。
また、別の電話ボックスのコードを切断しに行ったのだろう。

残された少女は、暫くその背中を見送っていた。そして空を見上げ、少女と反対方向へ歩みを進める。








「……………ボクも偽善者か」








ポツリと呟かれたその言葉は、夜の闇へと吸い込まれるように消えていった。
その言葉にどんな意味があったのか誰にもわからない。



沢の流れが聞こえる場所で、少女は静かに空を仰いだ。暗闇に浮かんだ白銀の月が、少女を見下ろしている。

もう何度あの石塊でしかない天体に見下されてきただろう。血に染まっていく中で、何度あの光を疎ましく思っただろう。








「……………この世界の残された時間に、意味はあるのですか?」








少女は目を附せる。
沢の水面が空に浮かぶ白銀の月をゆらゆらと写していた。



少女がその蒼い瞳を閉ざしていたその時、沢の近くを少年がさ迷っていた。

少女と年の変わらなそうな少年が。















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