罪滅しの物語


□拾漆
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教室へ向かって歩いていると、教師が慌てた様子で京子に駆け寄って来た。
何かあったのだろうか?








「笹川!お前の兄貴が怪我したそうだ!」



「え、お兄ちゃんが!!!?」








京子、お兄ちゃんがいるんだ。
妹に心配かけるなんて、悪いお兄ちゃん。

………悟史も。
沙都子に心配ばかりかけて。沙都子を長い間ひとりにして。早く帰って来て。








「急いで病院に行ってやれ!」



「は、はい!ゴメン、花、蒼唯ちゃん!私行くね!」








京子は来た廊下を走って行った。

……………何かよくないことが、雛見沢の外でも起きている。
惨劇が、度重なるようにこの世界で起きているのかもしれない。








「蒼唯?」



「……………学校が終わったら、お見舞い行こうね」








ならば、それはきっとボクの責任だ。
ボクが雛見沢にいれば、起きなかったことなのかもしれないから。

縁は、ヒトの出逢いは世界を変える。



教室にはほとんどの生徒がいない。
なんだか雛見沢の分校にいる気分だ。

良くないことは、既に起きているようだ。
いや、まだ起き始めたに過ぎないのか。








「綱吉が、いない」








隣の席は空いていた。
綱吉も、その良くないことに巻き込まれているのだろうか?

なんだろう?
ずっと嫌な予感がしている。
誰かが、この空の下で戦っている………?








「ケータイの電池切れたから帰りマス」



「コラ獄寺!貴様遅刻して、今来たばっかだろ!!」








隼人、帰るんだ。

なんだろう?
今帰ってしまったら、良くないことに巻き込まれる気がする。





惨劇は、悲劇は感染する。

廻り廻って、くるくる廻る。
くるくるくるくる、一廻り―――――








「蒼唯、もう授業終わっちゃったよ。今日はこれで終わりだってさ」



「……………そっか。なら、早く京子の所に行ってあげよう」








一人の不安さを、寂しさを知っている。
だから、一緒に傍にいてあげたい。
そう思った。





知らなかったんだ。
今まで起きていた現実も、これから起きるであろう未来も……………
未来は誰にもわからない。



でも、ボクは嫌な予感を感じていた。
それにもっと、気がついていれば。もっと用心していたならば。

未来を変えられたかもしれない。















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