罪滅しの物語
□拾伍
2ページ/4ページ
身体のあちこちが軋んでいる気がする。
そんな身体を引きずりながら学校へやって来た。
足音の聞こえていた綱吉達は、いつもと変わらないような様子で、少し安心した。
それを確認して、ボクは彼等から離れるようにして自分の席で過ごしていた。
空を見上げれば雛見沢での朝の声≠ェ聞こえていて。
圭一も、学校へ行ったんだろうな。
「蒼唯ちゃん、おはよう!」
「おはよう…、なのです、京子」
「昨日から元気ないけど、大丈夫?」
側に来たのは、京子だった。
京子は変わらずボクに笑顔を向けてくれていた。
そんなに多くの言葉を交わしてはいないのに、京子は鋭いなぁ。
雛見沢を離れて、この街で出来た女の子の友達は京子と花の2人だった。
ヒトに優しく、心配をされることは、慣れてない。
それでも、誰かの笑っている顔を見ていることは好きだ。
「昨日、紹介したい友達がいると言っていたよね?今日の放課後なら時間があるので、良かったら一緒にどこか行きましょうです」
「本当に…?じゃあ、ハルちゃんにも連絡してみるね!どこへ行こうか〜」
女の子って不思議だな。
レナや魅音、詩音も女の子らしい。
沙都子も梨花も女の子らしくなってきた。
女の子だから当然なんだけど、ボクは話についていくことが出来ない。
女の子って、難しい。
それにしても、圭一の落ち込んだ様子の声≠聞きながら、ボクは自分の罪を後悔していて圭一に、何ができるのだろうと考える。
「………京子は隠し事って、どう思いますです?」
「隠し事?」
隠し事、善意の小さな嘘。
それは相手を思ったものであっても、許されないのですか。
自分の全てを明かすことで、潔白を証明し、信頼を得るものなのでしょうか。
ボクは綱吉達にも、自分の全てを明かすことはできずにいて。
天覇家のことに関して言うのなら、雛見沢の仲間達にだって、詳しいことは話せずにいる。
「友達同士の隠し事…、誰にでも隠しておきたい秘密はあるものでしょう。それは全て打ち明け合わなければ、本当に信頼し合える関係と言えないのでしょうか?隠し事は、罪なのでしょうか?」
「うーん………、全部の秘密を打ち明け合うことが、本当の友達なのかな?」
どういうことだろう。
京子は京子なりにボクの言葉を考えくれていて、困ったように笑っている。
「私は友達同士でも隠し事があってもいいと思う。だって友達だもん、いつか話してくれるよ。私はそれまで待ってるよ」
「それで、いいのですか………?」
「全部の秘密を打ち明け合う必要はないんじゃないかな?辛い時に、辛いことを相談するのが本当の友達だと私は思うよ」
……………そっか。
なんだか、安心することが出来た。
ボクは、レナ達の仲間になれないと思ったから。
ボクは自分にもわからないこと、よく知らないことがたくさんある。
それは凄く存在を曖昧にさせていて、信用ならないような危うさを持っていて。
だから昨日のレナが圭一に言ったことが、ボクにも当てはまるのだと思った。
そしたら、少し怖かったんだ。
でも、安心した。
雛見沢の仲間だけじゃない。
みんなと、友達でいられるんだ。
「ありがとう、京子」
「よくわからないけど、蒼唯ちゃんが元気になったなら良かった!」
彼女の笑顔があたたかかくて、優しくて。
ボクも嬉しくて、笑みを返していた。
.