罪滅しの物語


□拾伍
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◇少女◇
運命に立ち向かう者















清々しい朝なのに、学校へと向かう足取りは重い。
異常気象とも言われている今年の訪れの早い夏の暑さに、制服は衣替えをしていて。
登校する生徒達の服装は涼しげだった。



あの日、蒼唯は屋上を飛び出して行った。
蒼い瞳が涙に潤み、声を荒らげて、叫んで。
その様子は何故か痛々しくて、涙がまるで身を裂いて流した血のように見えるほどに。

あの時。
自分達は彼女を傷付けたのではないだろうか。








「蒼唯は…、あの足音の正体知ってるみたいだけど、あれ、なんだったんだろうな?」



「わかるわけねぇだろ!!!?」








聞こえるはずのない静寂の廊下で、一人分多く聞こえたあの裸足の足音。

最初は冷たい表情で笑っていた蒼唯も、明らかに様子が変わった。
屋上を飛び出した蒼唯は、それから教室には戻って来ることはなかった。



聞こえるはずのないあの足音は、廊下で聞こえたのを最後に聞くことはない。

一体、なんだったのだろうか?
正体は掴めないままだ。








「蒼唯に…、聞いてみようか」



「止めとけ。アイツを傷付けるつもりか」








リボーンが山本の肩から、近くの塀の上に飛び移った。
3人は思わず黙りこんでしまう。



あの時。
間違いなく自分達が蒼唯を傷付けてしまった。

足音は確かに怖かった。
しかし、それ以上に蒼唯に言い当てられたことが怖かったのだ。
蒼唯に対して、畏怖するような目を向けてしまった。

謝り続けていた蒼唯に対して、本当に謝らなければならないのは、自分達だったのではないだろうか。








「どうすれば…、いいのかな」








蒼唯のためにできることは、ないのだろうか。
信じて待つことにした。
楽しい話を聞いて、一緒に笑った。

それでも、それは蒼唯の抱える何かを一緒に背負うことにはならなくて。
本当に蒼唯のためにできることとは、何なのだろうか…








「………なら、自分達で調べてみろ」



「え…?うわっ!!」








リボーンは綱吉に本を投げつけた。

古い本だ。
表紙には『雛見沢郷土資料』と書かれている。








「知らねぇことならば、自分達で死ぬ気で調べやがれ。ただな、蒼唯についての何を知っても、蒼唯に普通に接してやれなくなるのなら止めておけ」



「蒼唯についての何を知ったって、俺達はずっと仲間だぜ!」



「そうです!!アイツの過去や故郷なんて、関係ありません!」








山本、獄寺の目には強い意思がある。
綱吉は手にした古い本をじっと見つめる。








「ツナ、お前はどうだ?」



「俺も………、蒼唯は蒼唯だと思うから、拒絶なんて絶対にしない」








リボーンは満足そうな笑みを浮かべた。
それは最善の、最良の答え。

そう、思った。
そう信じた。



彼等は知りたいと思った。
力になって、支えてあげたいと。

その先には何があるのか。
知るモノはいない。















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