罪滅しの物語
□拾壱
2ページ/4ページ
なんで鷹野が此処にいるとか、何をしているのかとか、そんなこと考えたくもなかった。
目の前で笑っている鷹野から思わず目を背ける。
そんな行動さえ、鷹野は子どもらしいと言うように笑っていて。
鷹野三四は雛見沢の入江診療所で働く看護師。
彼女は惨劇の運命によって、綿流しの夜に県外にて焼死体で発見される。
雛見沢怪死事件5年目の祟りとして、死体の死亡時刻が祭りの夜に出歩いていた時間と合わず、死体が歩き回っていると言う話になる。
梨花の死と同じく起きる、決められた死。
回避すれば梨花の死も、覆すことができるのだろうか。
綱吉達はボクと鷹野を見比べ、首を傾げていた。
接点があるようには見えないのだろう。
「蒼唯、知り合いか?」
「……………………逢いたく、なかった」
「蒼唯………?」
鷹野は、鷹野だけではない。
鷹野達入江診療所の人間は、『雛見沢症候群』の研究のために『東京』からやって来ていた。
『雛見沢症候群』と言う風土病。
疑心暗鬼に取り憑かれ、狂っていく仲間達の根底にある病の欠片。
それを治療するために力を注いでくれていることは、感謝すべきこと、なのかもしれない。
しかし、この女は、ボク達雛見沢の住人を、人間として見ていない。
彼女にとって雛見沢は、ひとつの玩具箱でしかないんだ。
「蒼唯ちゃんのボーイフレンド?」
「……………」
「雛見沢にもね、前原くんって言う、男の子が新しく来たんだけどとっても面白い子よ」
「……………」
「魅音ちゃん達と一緒に、例の部活をしているそうよ」
鷹野の話なんて聞きたくない。
鷹野となんて話したくない。
耳を塞いでしまいたかった。
「………ねぇ、蒼唯ちゃん。雛見沢を出てから、引っ越してから、身体の異常とかない?いきなり環境が変わると疲れるでしょう?」
「……………ボクが発症していないことの確認ですか」
目を背けたって、耳を塞いだって。
それは逃げだ。
ボクはもう逃げたままの自分でいたくない。
ボクは背けていた顔を鷹野に向け、向き合う。
ボクは発症なんてしない。
疑心暗鬼になんて、取り憑かれたりしない。
「鷹野。貴女が何を考えているのか、ボクは知らない………、別に興味もない」
鷹野の勝手にすればいい。
ヒトの行動を制限出来るほど、ボクは偉くない。
神でもない。
「でも、ボクはボクの仲間達を傷付ける人間を絶対に許さない。それだけは知っておくといい」
「………そう。蒼唯ちゃんは、本当にお友達想いね」
相手が誰であろうと、何者であろうと。
ボクは戦う。
仲間達のために。
.