罪滅しの物語


□拾壱
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なんで鷹野が此処にいるとか、何をしているのかとか、そんなこと考えたくもなかった。
目の前で笑っている鷹野から思わず目を背ける。
そんな行動さえ、鷹野は子どもらしいと言うように笑っていて。



鷹野三四は雛見沢の入江診療所で働く看護師。
彼女は惨劇の運命によって、綿流しの夜に県外にて焼死体で発見される。
雛見沢怪死事件5年目の祟りとして、死体の死亡時刻が祭りの夜に出歩いていた時間と合わず、死体が歩き回っていると言う話になる。

梨花の死と同じく起きる、決められた死。
回避すれば梨花の死も、覆すことができるのだろうか。



綱吉達はボクと鷹野を見比べ、首を傾げていた。
接点があるようには見えないのだろう。








「蒼唯、知り合いか?」



「……………………逢いたく、なかった」



「蒼唯………?」








鷹野は、鷹野だけではない。
鷹野達入江診療所の人間は、『雛見沢症候群』の研究のために『東京』からやって来ていた。



『雛見沢症候群』と言う風土病。
疑心暗鬼に取り憑かれ、狂っていく仲間達の根底にある病の欠片。
それを治療するために力を注いでくれていることは、感謝すべきこと、なのかもしれない。

しかし、この女は、ボク達雛見沢の住人を、人間として見ていない。
彼女にとって雛見沢は、ひとつの玩具箱でしかないんだ。








「蒼唯ちゃんのボーイフレンド?」



「……………」



「雛見沢にもね、前原くんって言う、男の子が新しく来たんだけどとっても面白い子よ」



「……………」



「魅音ちゃん達と一緒に、例の部活をしているそうよ」








鷹野の話なんて聞きたくない。
鷹野となんて話したくない。

耳を塞いでしまいたかった。








「………ねぇ、蒼唯ちゃん。雛見沢を出てから、引っ越してから、身体の異常とかない?いきなり環境が変わると疲れるでしょう?」



「……………ボクが発症していないことの確認ですか」








目を背けたって、耳を塞いだって。
それは逃げだ。
ボクはもう逃げたままの自分でいたくない。

ボクは背けていた顔を鷹野に向け、向き合う。
ボクは発症なんてしない。
疑心暗鬼になんて、取り憑かれたりしない。








「鷹野。貴女が何を考えているのか、ボクは知らない………、別に興味もない」









鷹野の勝手にすればいい。
ヒトの行動を制限出来るほど、ボクは偉くない。
神でもない。








「でも、ボクはボクの仲間達を傷付ける人間を絶対に許さない。それだけは知っておくといい」



「………そう。蒼唯ちゃんは、本当にお友達想いね」








相手が誰であろうと、何者であろうと。

ボクは戦う。
仲間達のために。















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