罪滅しの物語
□玖
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季節外れに転入して来た『天覇蒼唯』という少女。
最初は素っ気ないような態度で自分たちと距離を作っていたが、不思議な雰囲気を纏い、いつもコロコロと表情を変える感情豊かな蒼唯は次第に表情を作ることなく自分達に笑い掛けてくれた。
まだまだ本当に信頼してくれている、そうとは言い切れないけれど、それでも、蒼唯に笑っていて欲しいと願い、自分達もできることをと差し伸べる。
出逢ったばかりの、ただ一人の少女に、どうしてここまで心を動かされるのかはわからない。
でも、それは決して悪くない感覚だった。
「はぅ〜…、異国の言葉は理解が出来ないのです。なんなのですか、『いたらすてぃんぐ(interesting)』?いんぐ形は現在進行形?」
「いや、それひとつの単語だから…」
英語の授業の後。
蒼唯は頭を抱えていた。
蒼唯は英語とか片仮名が苦手だ。
他の教科、数学や国語など他の知識は優秀で、中学生のレベルを遥かに凌ぐ知識を持っている。
それに引き換え英語の理解力は乏しい。
蒼唯は誰かも好かれ、慕われていた。
可愛らしい、愛らしい見た目も魅力だろうが、蒼唯は誰でも優しかった。
何より、笑顔を向けて、幸せそうに見えた。
でも、そんな蒼唯が何かを抱えていることを、自分達は出逢ったあの放課後や転校初日の昼休みにそれを知った。
「蒼唯は本当に英語が苦手なのな」
「あぅ、うぅ〜」
昼休み。
屋上で揃ってお弁当を食べるのは、今では当たり前になっていた。
蒼唯は英語の授業のへこみを抱えている。
「でも英語以外は出来るんだから、それでいいんじゃないかな?」
「だよね、ね!」
「っけ!立ち直りの早い奴だぜ」
蒼唯はのほほんと笑い、空を見上げていた。
蒼い綺麗な瞳に明るい空が写り込み、キラキラと宝石のように煌めいていた。
その笑みはとても眩しく、綱吉は頬を赤く染める。
爽やかに笑っている山本も、恥ずかしそうに顔を反らした獄寺も同じように頬を染めただろう。
蒼唯の笑顔は、心を惹き付けるようなものがあった。
手作りのお弁当のおかずを交換したり、また蒼唯の故郷である雛見沢村と言う場所の話を聞かせてもらって。
楽しい時間が過ぎていっていた。
「試験なんて雛見沢ではなかったのに………、明日の英語の単語試験をボクは一体どうすればいいのか」
「ツナん家で勉強すりゃいいだろ」
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