罪滅しの物語
□漆
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なんだか微妙な空気になってしまったな。
ボクは弁当箱を片付けながら、無意識に握り締めていた携帯をぽけっとへとしまった。
綱吉達も気まずさを感じたのだろう。
目が泳いでいるように思えた。
そんな中でも武は平然としていて。
「みんな仲良さそうな友達だったのな!」
「…ん?一番最初に喋って知恵は先生だよ」
「「「先生!!!?」」」
そんなに驚くことだろうか。
ボクは首を傾げる。
何もおかしなことをしたとは思えないのだけど。
「だってお前呼び捨てだったじゃねぇか!?」
「尊敬の念を欠いて呼び捨てをしているつもりはないですが、ボクは大抵ヒトのことは名前で呼びます」
ボク自身が名字を嫌っているからと言うのもあるのだけれど。
せっかくいい名前があるんだ。
名前で呼ばなきゃ、失礼な気がする。
「名前には意味がある。名前はとても大切なんだ。ヒトに名前を知られるのは、相手に魂の端を掴ませるようなモノ、らしい」
「……………なんだそりゃ?」
「占いかなんかか?」
あれ?
なんだろ?
誰から昔に聞いた記憶が。
思い出そうとすると、白黒の光景に、雑音が入って、よく思い出せない。
ボクにそれを教えてくれたのは、誰だっただろう。
まぁ、いいか。
「知恵はボクらの担任で、かれーに対して凄まじい熱意のあるヒトなの。変わってるけど、本当は凄くいい先生なんだよ」
「へぇ〜………(変わってるんだ…)」
知恵の前でカレーの悪口なんて罰があった時には、恐ろしかったな。
「その後は随分賑やかだったよね。受話器から少し漏れ聞こえてたよ」
「あの声がさっき言ってた部活の友達なんだな」
「なんか、喚いてるのうるせぇのもいたな」
苦笑いと言うか、むず痒いような気分だ。
仲間達のことを話題にされるのは、なんだか嬉しい。
でも、まぁ。
沙都子の叫びと言う名の説教には苦笑いしかない。
ボクのかけがえのない仲間達。
家族に等しい、大切な存在。
もう決して失いたくない、傷付けたくないそんなヒト達。
彼等の為に、ボクは今此所にいる。
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