罪滅しの物語


□壱
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非道な運命を繰り返し、世界を廻り続ける彼女。
同じ時間を繰り返す中で、互いに寄り添いながら、時には衝突することもあった。
それでも、ずっとずっと側にいた。

なのに。
今、ボクはこの土地を離れようとしている。
彼女の側を離れ、彼女を見捨てるように立ち去ろうとしている。



彼女から冷たい表情を向けられても仕方がない。
今ここでどんなに責められても、ボクはその咎を受け止めなければならない。

それほどまでに非道な行為であるとわかっている。
でも。
それでも。








「……………ボクは運命を見ているだけの、運命に従うことしか出来ない、運命に屈するだけの。そんな傍観者を止めることにしたんだ」



「何処へ行くのか聞いたのよ」



「運命を覆す、カケラを探しに行く」








それは大切なカケラ。
『ぱずる』の『ぴぃす』のように欠けてはならない大切な、トランプのカードのような無くてはならない重要なモノ。








「運命を覆す………?そんなこと、出来るはずがないわ。【この世界】も、今までの世界と同じ、何も変わらずに終わる世界だもの」



「始まる前から諦めるているの?」



「今まで傍観者だった貴女に何も言われる筋合いはないわ」








そう。
彼女の言う通り、ボクは傍観者だった。

幾度も繰り返される惨劇を、ただ見ているだけの冷酷な傍観者。
運命に従う従順な人間。



ただ見ていること。
それは生きようとする、生きたいと願う、彼女に対する裏切り行為。

ずっとずっと側にいたのに、ボクは彼女のために何もしてあげることができなかった。
彼女が運命に足掻き続ける姿を眺めて、助力を求められても何もせずに、ただ側で見ているだけの存在。

彼女の想いを知っていたのに。
彼女の願いを聞き続けていたのに。

謝っても、もうどうすることのできない【世界】に、ボクは嘆くことをやめた。








「梨花が【この世界】を諦めていても構わない。それでもボクは、運命を覆す為にカケラを探しに行く」



「……………」



「梨花…、どうか学んで。今更ボクが何を言っても、信じてもらえないことはわかっている。それでもいい…!!だけど、きっと命を覆すことはできるよ。運命に抗うことはできるよ。運命は打ち破れるんだよ」








どうか、どうか知ってください。
運命を変えることはできる。
惨劇を回避する術はきっと存在している。

ボクは冷たい視線を向け続ける彼女に背を向け、生まれて初めて、雛見沢の外へと足を踏み出した。





さぁ、行こう。

カケラを探しに─────















◇序章◇end
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