皆殺しの物語
□参拾
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暗闇の中だった。
光もなく音もない、何もない暗闇の中。
その暗闇の中に紅い少女がいた。
表情はなく何を思い考えているのか、読み取ることは出来ない。ただ暗闇の中で膝を抱え踞っていた。
―――――何を、悲しんでいるの?」
暗闇の中に声がした。
柔らかな声、なのに響きのある声が。
少女が顔を上げると、そこには少女と同じ姿の少女が立っていた。しかし、その少女の瞳は蒼だった。
「貴女は………、悲しくないの?」
「もちろん、悲しく思うよ。【この世界】で運命を打ち破ることが出来なかったことは、とても悲しい」
少女は紅い少女をそっと、包み込んだ。
「でも今は、あなたが悲しんでいることがもっと悲しいの。あなたは私≠セから。ボクと違うけど、同じヒト」
「私≠ヘ、貴女のことをたくさん傷付けてしまった。貴女が悲しんでいることが、私≠ヘ悲しかったの……………」
「ボクとあなたは同じだよ。笑っていて、ボクも笑う。ボク等はきっと、同じ感情を持っている」
紅い少女の頬を、一筋の涙が伝い落ちた。
蒼い少女は何も言わずに、少女を包み込んでいた。
「……………私≠ヘ貴女と違うわ」
「同じだよ。あなたはボクであり、ボクはあなたでもある。あなたの悲しみや苦しみも、ボクのものかもしれない」
暗闇の中に、フワッとしたあたたかな光が浮かび上がった。それはゆっくりと落ちていく。
「自分をひとりだなんて思わないでいいんだよ。ボクも、もう自分がひとりだなんて思わない。ボクの傍には、いつも私≠ェいてくれるから」
暗闇の世界に、光が溢れた。
まるで雪でも降っているように、光が降り注いでいた。
「弱いボクに、戦う力を貸して……………
あなたは私=c……、もう一人のボク。ボクの大切な感情なのだから」
紅い少女はその言葉に、今とは違う、蒼い少女を重ねた。
≪「無力な私に、どうかあなたの力を貸してください。あなたは私=Aもう一人の私。あなたは私の大切な感情です」≫
「貴女は、変わらないのね……………
『大空』と共にあった彼女≠フように、多くの絆を紡いでいく」
紅い少女は立ち上がった。
涙を拭い、降り注ぐ光を見上げた。
いつしか暗闇の中には光が溢れ、降り注ぐ光は一筋に少女達を照らし出していた。
「私≠ヘ貴女を守るため、貴女を悲しませるモノを拒んできた。貴女が戦うというのなら、私≠ヘ貴女と一緒に戦うわ」
「行こう、【次の世界】へ」
紅い少女は、蒼い少女の手を取った。
触れ合った手から、あたたかな光が溢れ、それは暗闇の世界を包み込んだ。
一緒にいた時間は、誰よりも多かった。
2人同じで、違うモノ。
同じ意志を持てばそのために戦う。
【次の世界】でも一緒にいよう。
一緒に、戦おう―――――
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