皆殺しの物語
□弍拾陸
2ページ/4ページ
ボクはランボを抱き抱え、雷の守護者戦のあった屋上にきていた。
4本の鉄柱が空へとのびている。
見上げた空に、声はない。
「各フィールドに設けられたポールの頂上には、フィールドと同じ種類のリングが置いてあります」
また、奪い合わなければならないの?
戦い合わなければならないの?
また、誰かが傷付く。
誰かがいなくなってしまう。
もうこれ以上、誰も傷付いて欲しくないのに。誰もいなくなって欲しくないのに。
戦いが繰り返されることが、ただただ悲しく嘆かわしい。
「どうぞご自由に」
「ただし、出来ればの話ですが」
腕に違和感を感じると、それは突然の痛みに変わった。先程覆面の女に取り付けられた腕輪に、何か仕込まれていたようだ。
目の前の世界が歪み、体がふらつく。
立っていることすら困難になり、ランボを抱えたまま、ボクはそのまま座り込んだ。
「ただ今、リストバンドに内蔵されていた毒が注入されました」
朦朧とする意識の中で声がする。
体が熱い、四肢の感覚がない。
「デスヒーターと呼ばれるこの毒は瞬時に神経を麻痺させ、立つことすら困難にします。そして全身を貫く燃えるような痛みは徐々に増してゆき30分で……………
絶命します」
またヒトが死ぬ。
目の前からいなくなっていく。
そんなの嫌だ、絶対に嫌だ。
誰も失いたくないと見ていることを止めたんだ、誰も失わないために戦うことを選んだんだ。
「ど、どういうことだよ!!大空戦なのに、なんでみんながこんな目に!!」
「大空であるボスの使命だからです」
「晴・雷・嵐・雨・霧・雲。すべてに染まりつつ、すべてを飲み込み包容することが大空の使命」
全てを包容し受け止める役目を担う『大空』、それが綱吉。
彼なら大丈夫だと信じてる。
きっとみんなを救ってくれる。
彼は一人じゃない。
「守護者全員の命がボスの手に委ねられる戦い。それが大空戦なのです」
「委ねるって………、こんなの!!」
「毒の進行を止める方法が1つだけあります。それは守護者のしているリストバンドに同種類のリングを差し込むことです」
覆面の女が言うことが本当なら、鉄柱に支えられたこの台を倒せば、ランボに解毒剤をあげることが出来る。
「じゃあ蒼唯はどうなるの………!?」
「彼女のリストバンドは守護者のものとは違い、大空戦が終わらない限り外すことは出来ません」
「そ、そんな!!」
ボクは綱吉を信じているから。
だから死なない、まだ死ねない。
惨劇の舞台から途中で退場するなんて、もう二度とするものか………!!
【この世界】を最期まで見届けるんだ。
なにがなんでも負けられない、諦めない。
「大空戦の勝利条件はただ1つ。ボンゴレリング全てを手に入れることです」
これが最後の戦い。
【この世界】で、ボクが彼等に出来る唯一のこと。
信じてるよ、信じてる。
「それでは大空のリング
XANXUSVS沢田綱吉
勝負開始!!!!」
ボクは貴方を信じてる……………
でも、本当にそれがあなた達に出来ることなのだろうか?
.