皆殺しの物語
□弍拾陸
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◇大空戦◇
包容する大空
強制招集で集まった守護者達。
その中には晴の守護者戦で傷を負い倒れたルッスーリア、霧の守護者戦で逃げ出したマーモンも集まっていた。
戦いに関わった者が続々と集まる。
「沢田氏側の雷の守護者も、来たようですね」
チェルベッロに連れられるようにして現れたのは、意識を取り戻したばかりのランボを抱えた蒼唯だった。
「な、なんでランボまで!?蒼唯だって守護者じゃないのに!!」
「綱吉、ボクが自らこの戦いに関わることを望んだ。もう、ただ見ているだけの傍観者を止めるために。ボクはここにいる」
蒼唯はそっと笑った。
その笑みは、まるでその場から消えてしまいそうなほど儚かった。
【前の世界】でも、彼女は最後に笑って目の前から姿を消していった―――――
嫌な予感がする。
彼女を守るために戦うと決めたのに。
「大空戦では、6つのリングと守護者の命をかけていただきます」
守護者の命、その言葉に蒼唯は目を瞑る。
綱吉は怪我したランボが戦いに参加することを反論するが、それはヴァリアー側にとっても同じことだった。
「蒼唯………、蒼唯はなんで!?」
「先程本人が言っていましたが、これは彼女が自ら望んだことです。本来争奪戦への部外者の干渉は許されることではありませんが、今回は特例で許可が出ました」
「ただし、彼女はあくまでも雷の守護者の付き添いでしかありません。勝者がどちらになった場合も争奪戦後、彼女がリングを手にすることは叶いません」
蒼唯をこの戦いに巻き込んだ。
戦いを、争いを、誰かが傷付くことを望んでいなかった彼女を巻き込んでしまった。
綱吉は拳を強く握り締め、悔やんだ。
大空戦の戦いは学校全体。
綱吉とXANXUSの持つリングのカケラをひとつに完成させなければならない。
守護者には、小型カメラのついたリストバンドが渡された。蒼唯の手には腕輪のようなものがつけられる。
「では、やるなら今しかないか………」
「円陣だな!」
「気合い入れましょう10代目ッ!!」
守護者が各フィールドに散る前に、綱吉達は肩を組む。円陣に参加することはなく、その様子をクローム、雲雀も見ていた。
10mルールという了平の考えに守護者全員が円陣に入ったとみなされる。
蒼唯はそれを嬉しそうに見ていた。
「「「「沢田ファイッ!!オー!!」」」」
「どうか、誰も傷付くことがありませんように……………」
円陣を終えると、みんな自分のフィールドの場所へと散っていく。
蒼唯はチェルベッロに促されるように屋上へ向かおうとしていた。
綱吉から声をかけようとしたその時。
蒼唯はランボをチェルベッロの一人に預けXANXUSの前に立った。
「XANXUS」
蒼唯はXANXUSと正面から向き合っていた。その光景にフィールドに散ろうとしていた全員が足を止める。
XANXUSは紅い瞳を蒼唯に向けた。
「XANXUS。ボクは今、貴方に問う。この戦いに意味があると本当に思っているのですか?」
「……………どういうことだ」
「戦う必要が、本当にあるのですか?この戦いで得るものがあると、本当にそう思っているんですか?」
蒼く澄み切った瞳が真っ直ぐXANXUSの姿を捉えていた。
「俺が、ボンゴレの10代目になる」
「……………ボクには、貴方もまた、運命に屈し、抗うことを諦めてしまったヒトのように思える」
蒼く澄み切った瞳は、紅い瞳の内を見通すように見つめている。
その瞳の前では嘘偽りは通用せず、彼女を見ていると顔を背けることが躊躇われる。
「この戦いに意味がないことを知っているのではないのですか?この戦いで得るものなど、有りはしないとわかっているのではないのですか………?」
XANXUSは何も言わず、しばらくして蒼唯に背を向けた。
蒼唯はその背中を見ていた。
澄み切った蒼の瞳は、さらに悲しみの色を深め、沈んでいく。
「貴方は間違ってるよ」
悲しみに溢れたその姿を、XANXUSは見ようとしなかった。
この戦いを止めることは出来ない。
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【「雲雀全班、包囲完了」】
【「白鷺全班、包囲完了」】
【「こちら鳳、全班の配置を確認」】
「蒼唯ちゃん、探しにいくわよぉ?もういい〜かい?ま〜だかなぁ?うふふふふ」
良からぬ者達が並盛中学校に集まっていたことを、少女は知らない。
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