皆殺しの物語


□弍拾肆
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◇惨劇◇
去り逝く仲間達の声















綱吉は戦うことを決めた。
戦いは終わらない。
この世界はまだ終わらないんだ。

より強い意志が望む未来を切り開く。
非道な運命さえも打ち破る。
どうか、どうか負けないでください。
ボクはただ戦うことを決めた綱吉を見ていることしかできなかった。








「っ!!!?」








不意に感じた予兆。
ボクは自分で自身の体を強く抱き抱えた。
恐怖に、体が震える。








「蒼唯!!どうしたの!?」



「………ぃゃ………、嫌ッ!!!!」








空が、泣いている……………
避けられない運命が、今起きている。
嫌だ………、嫌だッ!!!!
聞きたくない、見たくない!

今この場所から干渉することは出来ないのに、雛見沢で起きている惨劇が空を通して感じられる。










「鷹野さん………、これで俺達が負けたと思うなよ………!!」





「圭一!!!!」








わかる、伝わる、見える、感じる。
梨花の見聞きしていることが。
この空の下で起きていることが。
空虚にボクの目の前に浮かび上がる風景。
手を伸ばしても、ボクは何も干渉することはできない。



圭一の体が捻るようにしながら崩れ、血をばら撒きながら地面に仰向けに倒れた。
嘘だよ、嘘だって言って………!!










「やめて!!魅ぃちゃんを撃たないで!!!!」



「ダメよ。魅音ちゃんが部長さんなんだから、一番じゃなきゃね?」











「魅音!!!!」








魅音の体が痙攣したように跳ねた。
ヒトがこんなにも簡単に死ぬというの?










「あら、あなたが先に撃たれたいの?大人しくしていれば、もう数秒は余計に生きられたのに」



「や、やめて詩音さん!!挑発なんかしても意味がありませんでしてよ!!」









意味はある。
挑発する言葉を口にした詩音の行動には、沙都子を守りたい想いがある。
悟史との、約束だから。










「悟史君も………、あんたが殺したんですね………?そうなんでしょう!?」



「生憎、冥土の土産って嫌いなの。だから教えてあげないわ」











「詩音!!!!」








ヒトの命が簡単に奪われる。
同じヒトの手によって。
そんな傲慢で理不尽な行為が、許されると言うのですか………?

ボクは許せない。
今仲間を殺めている鷹野を、惨劇の根源である鷹野を許せない!!










「連続怪死事件は全部、鷹野さんの仕業だったんですね。『オヤシロさま』の代行者のつもりですか?」










ヒトが神になれるはずない。
なのに、その欲の為にヒトが殺される。










「なれるわよ。これからなるもの!!」



「無理だよ。だって『オヤシロさま』は、居る≠だもの」











「レナ………!!!!」








何故ボクは見ていることしか出来ない。
何故ボクはこんなにも無力なんだ。

消えていく。
この世界の仲間の命が。
仲間の声が遠くへ、消えていく。










「クイズをしましょうか。ブロッコリーとカリフラワー、緑色はどっち?」



「………カ、………ブロッコリー」



「うふふふ、正解」











「沙都子!!!!」








彼女はこの世界で何度も痛みを味わった。
なのに、殺されなければならないの?
その死がこんなにも呆気ないの?



何故、みんなが殺されるの?
【この世界】からいなくなるの?
素晴らしい世界になるはずだったのに。
運命を打ち破れると、誰も疑わなかった。
なのに、どうして……………

涙が頬を伝い落ちていく。
悲しい………、そして何より悔しい。















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