皆殺しの物語


□弍拾参
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◇雲戦◇
孤高の浮き雲















恭弥が戦うのは、羽入が『すとーきんぐ』をしていたあの機械の塊。

あれは一体何者なのだろう………?
鉄屑の人形にしか見えないのに、命の鼓動を感じる。鎧としての装備なのだろうか。
何か嫌な予感がする。








「蒼唯、大丈夫………?」



「凪………、観に来たんだね」



「骸様が、蒼唯をとっても心配してた」








声をかけてきた凪に昼間のことを責められるかと思いながらも、凪は優しい言葉をかけてくれた。
骸にも、心配をかけているんだ。

大丈夫。
ボクは諦めない。
もう、迷わないと決めた。








「大丈夫だよ、ボクは大丈夫」



「……………蒼唯は、独りじゃない。私や骸様が蒼唯の傍にいる。だから、無理して強くならないでいい」



「!!!?」








凪の言葉に表情が崩れた。
本当は怖いよ、梨花達の傍にいたいよ。
戦いなんて見たくないし、ボク自身も戦いたくない。
それでも、それでも………!!

優しい言葉が嬉しいはずなのに、素直に喜べないのはどうしてなんだろう。








「ありがとう………、凪。ボクは今この時を諦めない、【この世界】を諦めたりしないから」








【この世界】の明日を迎えることをボクも望む。今を過ごしている時間が、最後の時ではないことを証明してみせる。
運命に抗い、立ち向かってみせる。

凪は少し離れた場所から戦いを観戦するようだった。傍には昨日も一緒にいた、骸の仲間たちの姿もある。









「雲の守護者の使命とは『何者にもとらわれることなく、独自の立場からファミリーを守護する孤高の浮き雲』」








恭弥にぴったりだなと思った。
恭弥って、雲みたいにふわっと笑うんだ。
あの笑顔がボクは好き。

戦いの舞台は、まるで戦場のよう。
沙都子の『とらっぷな』んて本当に子供騙しなもので。目の前にあるそれは、ヒトを傷付けるための武器でしかない。








「怖けりゃ逃げろ。お前等のボスのようにな」



「ふざけんな!10代目は逃げたんじゃねぇ!!」








綱吉が逃げるはずない。
彼は強い。

ボクと違って、強いんだ。








「ツナは来る必要ねぇのさ。雲雀はうちのエースだからな。アイツは負けねぇ」








えーす………?
それはトランプの1の札。
切札とも言えるとっておきの札。

恭弥は負けない。
ボクもそれを信じる。



信じることを諦めない。
運命は打ち破れるって………、教えてくれたヒトがいる。
それを学んだ【世界】が確かにあった。















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