皆殺しの物語


□弍拾弍
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◇暗雲◇
立ち込める不安















どうかこの夜に

何があったか教えてください

それは例えるなら箱につめた猫



箱の中の猫は

生か死かすらもわからない





どうかあの夜に

何があったか教えてください

箱の中の猫は死んでいたのです








Frederica Bernkastel


















「また、惨劇がはじまるのね」








暗闇の世界に凛とした声が木霊する。
そこに一人佇むのは整った顔立ちをした、大人びた雰囲気の少女。

暗闇の世界に散らばる微かな光が煌めくと少女の紅い瞳が開かれる。
煌めく光をしばらく見つめていると、紅い瞳がうっすらと蒼くなったように感じた。








「あの子は、惨劇の運命に打ち勝つことが出来るのかしらね………?」





「“あの子”とは、誰のことかなぁ?」










暗闇の世界にもう一人の声がした。
紅い瞳が、まるで不愉快そうに暗闇の中を舞う金色の蝶を見た。








「無限の魔女≠ニもあろう御方が、一体何の御用だというのかしら?」



「妾は愛らしい最愛≠ェ心配なのだけのこと。まったく、ラムダデルタ卿の御戯れも大概にして戴きたいものだ」








金色の蝶は何匹も辺りを飛び回っていた。
その蝶たちは集まり、人の姿を成した。
そこに現れたるは一人の金髪の女、彼女は魔女だった。黄金≠ニ無限≠フ称号を併せ持つ、赤き真実を提唱する魔女。








「久しいな真紅の魔女=B相変わらずの過保護は健在のようで何よりであるぞ」



「その名で呼ばれることは好きじゃないと何度も言ったはずなのだけれど、黄金の魔女<xアトリーチェ卿。貴女ともあろう存在が干渉してくるなんて、何を企んでいるの」








少女の言葉に女は笑った。
露骨に表情を歪めた少女は、その紅い瞳を細める。何がおかしいのか理解出来ない。








「本当に相変わらずなのだなぁ。なぁに、退屈は魔女を殺す唯一のもの。これからの戦いを妾も見届けようと、こうして遥々とやって来たのではないかぁ〜」



「まぁとっても迷惑な話」








少女の棒読みの皮肉言葉。
女はそれをわかっていながら、また笑みを浮かべる。

付き合いはそこそこの時間になるが、少女は出逢った時と何も変わっていない。
その保身に走る過保護っぷりはむしろ悪化しているのではないかと仲間内では有名な話だ。








「お前は相変わらず最愛≠フに夢中か。
まぁいい、妾は勝手に傍観させてもらうとしようじゃないか。直に妾の他にも魔女達が集まってくる」








女は金色の蝶へと姿を変え、暗闇の世界を四方へと飛び去って行く。










「過保護も過ぎるといづれ本当に嫌われてしまうぞ。否定の魔女=Aシュヴァリエ卿―――――










女の声が、暗闇の世界に響き渡った。
少女は暫くして、ほくそ笑みを浮かべた。








「その名で呼ばれることは大嫌いで、余計な御世話よ」








暗闇の世界での出会いが、何かを変えるのだろうか?
歯車は終末に向かって加速する。















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