皆殺しの物語
□弍拾壱
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◇輪廻◇
再びの廻り合い
今宵の戦いが終わった。
雛見沢では祭が終わった頃だろう。
綿流しの祭が終わり、世界は終わりに向かって急激に廻りはじめる。
富竹が死に、鷹野が死に。
誰が姿を消すのだろう、誰が疑心に狂ってしまうのだろう。
惨劇がはじまる。
梨花は富竹と鷹野に警告を促した。
みんなに、彼等の運命を伝えた。
これで運命が変えることが出来たなら、誰も死なずにすむ。惨劇を回避することが出来る。
「あの赤ん坊は逃げましたよ。彼は最初から、逃走用のエネルギーは使わないつもりだったようです。まったく、抜け目のないアルコバレーノだ」
空から視線と意識を目の前に戻す。
やっぱりマーモンは消えたりしていないんだ。無事とは言えないだろうが、一先ずは胸を撫で下ろした。
骸はそんなことしないって信じてた。
だから、本当は最初から安心することが出来ていた。彼は、優しいから。
「ゴーラ・モスカ。争奪戦後、マーモンを消せ」
機械人間、モスカは返事をするように煙を吹き出した。「消せ」というXANXUSの言葉に不安が立ち込める。
「まったく君は………、マフィアの闇そのものですね、XANXUS。君の考えて
いる恐ろしい企てには、僕すら畏怖の念を感じますよ」
恐ろしい企て………?
XANXUSは何かを企んでいる?
この場所でも良くないことが起きてしまうのだろうか。
不安な気持ちが嫌な予感を感じさせる。
明晩の戦いを、この土地での綱吉達の戦いを、ボクは最後まで見届けることが出来るだろうか………?
もしも雛見沢で惨劇が起きたなら、みんながいなくなってしまったら。
ボクは―――――
「首をつっこむつもりはありませんよ。僕はいい人間ではありませんからね」
「ぁ………!!」
骸と視線がぶつかった。
声は聞いていた。
姿は見えていた。
なのに、その時はじめて本当に再会した気持ちになった。涙が頬を伝い落ちる。
「君より小さく弱いもう一人の後継者候補をあまりもて遊ばない方がいい。それに、彼女を悲しませないでください。彼女は、幾度もの惨劇を廻っているのですから」
ボクは今まで立ち尽くしていたヴァリアー側の観戦席から、骸へと歩み寄った。
赤と青の瞳が正面からボクを捉える。
「お久しぶりです、蒼唯」
「むく…ろ……………」
「おや、僕を忘れてしまったのですか?
【次の世界】は覚えていると、【あの時】言ってくれたではないですか」
骸は覚えていてくれた。
【前の世界】の出来事を、すぐ近くにあった、惨劇の世界を。
手を伸ばせば届いたはずなんだ。
【あの世界】は運命を打ち破る奇跡を起こし、みんなで惨劇を回避した世界だった。
みんなで笑い合える未来に至れるはずの、これからの希望を抱ける世界だった。
なのに………、なのに………!!
「骸、骸………!!ボクは、ボクはまた!!」
「貴女の気持ちは知っていますよ。綻びを正そうと貴女は抗った、【この世界】でも流れに逆らおうと貴女は戦っている」
思わず骸に抱きついた。
そして、子供のように声をあげて泣いた。
自分でも情けなかった。でも骸は、そんなボクを優しく包んでくれた。
惨劇に、運命に打ち勝ったはずなのに。
どうしてボク等は殺されてしまったのですか?
不条理に嘆き、涙した。
何が欠けているのか、カケラとは何か。
今のボクに答えは見つからなかった。
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