皆殺しの物語


□弍拾
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◇霧戦◇
まやかしの幻影















クローム髑髏と名乗った少女が戦いの場に立った。少女であることに綱吉達は動揺を隠せずにいた。

骸に似ている。
だけど、彼女自身の意思を感じる。
ヒトとは何かが違う違和感。










「蒼唯………、ようやくまた―――――










ボクの名前を呼ぶこの声は、骸の声。
骸は彼女の内にいる。

理解すると、彼女のことが空を通して見るように伝わってきた。
悲しみが、苦しみが、彼女の想いが。



気付いた時には、彼女に歩み寄っていた。
同じ年くらいなのだろうか?
レナや魅音とはまた違った雰囲気。








「貴女、は………?」



「ボクは蒼唯、蒼唯だよ」








骸、ボク等はまた廻り逢えたんだね。
彼女のおかげで。
彼女がいてくれたから、こうして廻り合うことが出来た。








「生きていてくれてありがとう。だから、これからも生きていて欲しい……………
生まれたことを嘆いたりしないで、どうか笑っていてください」








この世界から消えないで。
輪廻を廻る骸の傍にいてあげて。
彼を独りにしないで。

ボクの身勝手な願いを彼女は黙って受け止めてくれた。ここにまた、新しい繋がりが結ばれる。








「大丈夫………。私は、負けない」



「強いんだね、羨ましく思うよ」



「……………蒼唯は、優しい」








ボクは思わず呆気に取られ、笑みを浮かべた。彼女もそれを見て微笑みを浮かべる。
いい『仲間』を見つけたんだね、骸。

ボクは少々疑いの視線を向けている綱吉達と向き合った。








「綱吉、彼女は戦えるよ」








今の姿がまやかしかもしれない。
だけど、笑顔は確かにその場に残る。
彼女は信用出来る。
ボクは骸が選んだ彼女を信じる。








「彼女を信じてあげて」



「蒼唯……………。じゃあ、彼女に頼むよ」








戦う者が揃った。
戦いがはじまる。

また昨晩のように【この世界】から誰かがいなくなってしまうのを、目の前で誰かを失うことになるのは嫌だ。
どうかお願い、消えないで………!!



体の震えを堪えるように唇を噛み締めていると、頬にか細い手が伸ばされた。
戦いなんて知らずに済んだ優しい手なのに彼女もまた運命に翻弄される。








「蒼唯………、ありがとう。私、あなたとたくさんお話したい」



「ボクもだよ、凪」








凪、それは彼女の本名。
もうその名を呼ぶヒトはいない。
なら、ボクが呼ぶよ。

凪は一度驚いたような顔をして、それでも優しく笑ってくれた。
その笑みを、失いたくない。
もっと綱吉達といたかったけど、覆面の女に促されてヴァリアー側へと戻った。








「今回の戦闘フィールドは、体育館全てで館内の物は何を使ってもかまいません。
尚、このフィールドには特殊装置は用意されておりませんので、あしからず」



「え?何もないの………?」



「霧の守護者の特性には、余計なもんはいらねぇんだ」








本当の姿を掴めない霧。
それはまるで骸のようで、惨劇の運命を幾度も繰り返してきた梨花のようにも感じられた。
梨花………、大丈夫だろうか。








「無いものを在るものとし、在るものを無いものとすることで敵を惑わし、ファミリーの実体をつかませないまやかしの幻影」








骸、貴方はボクを覚えていますか?
前の世界を、覚えていますか?

貴方に再び廻り逢うことが出来たのなら、ボクは【この世界】を変えることが出来ますか?








「それでは霧の対戦
マーモンVSクローム髑髏

勝負開始!!!!」








ボクは戦うことを決めたというのに、ただ見ていることしか出来ません。
でも世界を否定しない。



骸、貴方は……………
ボクの願いを憶えてくれていますか?
【世界】が崩壊することさえ望むほどに、叶えたかった願いが、守りたかった想いがあったのです。















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