皆殺しの物語
□拾漆
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◇選択◇
選んだ道、進む未来
今晩の戦いが【この世界】の運命を分かつことになる。
雛見沢でも、この場所でも……………
ボクはただ見ていることしか出来ない。
見守ること、見届けること。
それが今のボクに出来ること。
「……………何を考えているんだい?」
「ボクは無力なんだと………、ずっと昔からわかっていたことなのに、【この世界】に来て思い知らされた」
目の前にいる傷だらけのベル。
昨晩の戦いを終えた後から、彼の意識は戻っていない。
同じ部屋にはマーモンがいた。
救うことが出来なかったのだと思い知る。
同じことが起き、目の前で誰かを失うことになってしまったら、ボクは………!!
「君は優しすぎる」
「……………ぇ」
「僕達は君の大切な者を傷付ける敵だよ?
その敵を無償で助けるなんて、僕には理解出来ない行動だよ」
敵、味方は関係ない。
ボクは誰かが傷付くことを望まないんだ。
もう目の前で、関わりのあるヒトが消えてしまうのは嫌なんだ。
「……………例え君達が綱吉達の敵でも、傷付いて欲しくないんだ。【この世界】に欠けていい人間なんていない。君とボクが出逢ったことも、運命を変えるために必要な出逢いだから」
守りたいんだ。
でも、ボクは英雄じゃないから。
だから、せめて自分の関わったヒト達を、大切だと思うヒト達を守りたいんだ。
仲間を信じていないわけじゃない。
だけど、雛見沢のことは心配だ。
嫌な予感が止まらない。この予感は、何を予知しているんだろう?
「君は、僕達が怖くないのかい?」
「……………怖くないよ。むしろ、一緒にいて楽しいくらい」
最初から、彼等に恐怖はなかった。
あったのは、“もう一人の自分”に対する恐怖と苦しみ。
そして何よりボクが恐れるものは。
「ボクが恐れるものは、たったひとつ」
恐れるものは、孤独だけだ。
独りが怖い。
この世界に独りになることが。
独りはボクを殺す。
恐怖から逃げるために、ボクは死ぬ。
だから、雛見沢の惨劇が起きたら、ボクはこの世界から消える……………
梨花や、みんなの後を追って。
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