皆殺しの物語
□拾伍
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戦いが始まって3分が経過した。
隼人………、落ち着いて。
あれはただの手品に過ぎない。
仕掛けがあるんだよ。
「なぁ、嵐の守護者の使命って知ってる?
『常に攻撃の核となり、休むことのない怒濤の嵐』」
違う。
隼人は今ある選択肢を決して認めない、今ある天候を変えてしまうようなヒト。
立ち止まらないで………、嵐は去るまで風が吹き続ける。
諦めないで、運命に抗うヒト。
「爆発に乗じて隠れたつもりかよ。隠れんぼ、だぁ〜い好き」
隼人は理科室に逃げこんだ。
だけど、ベルには居場所がわかっている。
隼人には種が仕込まれているから。
「嵐の守護者がこれじゃあ、お前のボスも知れてんな。蒼唯に殺すなって言われたけど………、やっぱお前殺すわ」
ベルの言葉に握りしめた拳が震えた。
隼人の瞳に、覚悟が灯る。
冷静さが戻って来た。
熱くとなると周りが見えなくなるのも、嵐の特徴かな。
ベルの刃が、隼人に向かって放たれた。
しかしその刃が刺さったのは……………
「人体模型!!!!」
その首には、糸がまとわりついている。
あれがベルの仕込んだ種。
「お前この風じゃなんも出来ないじゃん。どうすんの?」
隼人は爆弾を構える。
大丈夫、隼人は嵐の疾風。今ある選択肢をぶち壊し、自ら新しい選択肢を切り開く。
彼はそういうヒトだ。
「果てろ!!!!」
隼人の手を離れた爆弾は、風の壁にぶつかることなくベルに向かって飛んだ。
爆弾が、曲がった。
ベルは大丈夫だろうか………?
「ベルの奴、無傷ではあるまい」
「そのとおり………、アレが始まるね」
「おぞましいぜぇ」
何が、何が始まるというのだろうか?
爆煙が晴れ、そこに佇んでいたのは。
血だらけのベル。
彼は笑っていた。
狂っている……………
「自分の血を見てから始まるのさ。プリンス・ザ・リッパーの本領は」
《「あははははははははははは」》
《「くけけけけけけけけけけけ」》
「っ!!」
思い出した世界に、体が震え、その場に膝をついた。狂っているベルと、過去の世界の仲間を重ねてしまう。
「う゛お゛ぉい、大丈夫か?」
『蒼唯……………』
「大丈夫………、大丈夫だから………」
あんな世界は、もう来ない。
レナも、魅音も……………
もう狂ったりしない。
疑心暗鬼に取り憑かれることはない。
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