皆殺しの物語


□拾参
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◇喪失◇
奪われたモノ















ぼろぼろのランボの姿に、ボクは唇を噛み締めた。傷だらけになった小さな体を強く抱き締め、微かな命の温もりを感じる。
ごめん、遅くなってごめん。
守ることが出来なくて、ごめんなさい。



大きくあたたかな橙色の灯火が、穏やかにそのヒトの額に灯っていた。

大空のように広く、優しい心を持つ、そのヒトの額に。








「綱吉……………」



「蒼唯、怪我はないか?」








綱吉の言葉に頷き、腕の中のランボの体を上着で優しく包んだ。これで少しは出血と体温低下くらいは防げるだろう。








「いくら大事だっていわれても、ボンゴレリングとか、次期ボスの座とか………
そんなもののために、俺は戦えない」



「「「「「「!!!!」」」」」」



「でも友達が………、仲間が、大切なヒトが傷付くのは嫌なんだ!!!!」








誰にも傷付いて欲しくない。
それは、綱吉も同じ気持ちなんだ。
額の灯火が消えた綱吉は、さっきとはまた違った強さを秘めた視線を向けていた。








「ほざくな」



「!!」








とてつもない殺気に、ランボをその場に横たえボクは綱吉の体を突き飛ばした。
ボク等の体のすぐ近くを、熱気の塊が通りすぎていくのを感じた。

綱吉の立っていた場所は強い力に抉られたように亀裂がはいっていた。








「あ、ありがとう、蒼唯」



「綱吉に怪我がなくて良かった」








攻撃が飛んできた方を見上げれば、そこには紅い瞳の男がいた。彼の紅い瞳は、鋭い眼光でボク等を見下していた。

綱吉は立ち向かう姿勢で、彼を見上げる。
その瞳には覚悟がある。








「なんだその目は………?まさかお前、本気で俺を倒して後継者になれると思ってんのか?」



「そんなこと思ってないよ…!!俺はただ、この戦いで仲間と大切なヒトを誰一人失いたくないんだ!!」



「綱吉……………」








ボクも、仲間を失いたくない。そのために雛見沢を離れ、ここにやって来たんだ。



誰も傷付いて欲しくない。
誰にも悲しんで欲しくない。

ただ、みんなに笑っていて欲しい。















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