皆殺しの物語


□拾弍
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空は曇天。天気は雨。
家を出てから雨粒が体に打ち付けている。
雨は好きだ。でも雨の日は嫌い。

雨の日にはいい思い出がないから。
何かが起きる時、必ず雨が降っている。



レナが圭一に謝り続けた日も雨だった。
5年前の世界で赤坂が死にかける日も雨。圭一が北条鉄平の死体を探す日も雨。
詩音がレナと出逢った日だって雨だ。





いつの夢か、出来事か。
一人の少女が希望を求めて、未来を求めて逃げ出した日も雨だった……………








「何者だ!?」








そっと後ろを振り向けば、ヴァリアー側の雷の守護者が立っていた。
確か、フゥ太やランボ達と一緒にいた時に一度逢っている。

昨日と同じく制服に上着を羽織った格好だから彼にはわからないかもしれないが。








「貴様は昨夜の………!!」



「…………………………こんばんは」








とりあえず、頭を下げる。
挨拶以外に言葉が見つからなかった。

予想外だったのか相手は静かに殺気を収めて隣に立った。








「何故ココにいる?部外者は去れ」



「……………部外者なのは、わかってる。
それでも、見届けたいと思うんだ。見守りたい。この戦いを、この世界を」








雛見沢では沙都子を助けるために、圭一を筆頭に興宮の児童相談所に向かった。
沙都子を助けるため、雛見沢で戦っている仲間がいる。

何も出来ない小さく無力なボクは、この場所で綱吉達の戦いを見届けたい。
誰も傷付けさせない。



この世界の運命に、ボクは抗う。








「ボクは綱吉達を大切に思っているから、彼等と戦うあなた達との関係は敵なのかもしれない。それでもボクは、この戦いで誰にも傷付いて欲しくないんだ」








誰にも、傷付いて欲しくない。
それが不可能なら、傷付けさせない。
ボクが守ってみせる。








「あなた達に戦うなと言うのは無理なことだろうけど、どうか死なないで」



「なっ………!!!?」



「それから、無理を承知で御願いします。どうか無意味にランボを傷付けることをしないでください」








深々と頭を下げ、ボクはまた一人になれる場所から戦いを見守る。

敵味方、どちらも傷付いて欲しくないなんて、ボクは欲張りだ。
ただ見ていることしか出来ないのに。
卑怯、かもしれない……………





雷の戦いがはじまる。

雨は、更に激しさを増す……………















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