皆殺しの物語
□拾壱
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◇晴戦◇
照らす日輪
戦いがはじまった。
ボクはただ見守ることしか出来ない。
あの小さなカケラの指輪を奪い合うことに本当に意味はあるのだろうか?
命が、消えてしまうかもしれないのに。
「ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪となる。それが晴の守護者の使命だからな」
そんなの間違ってる。
太陽は、そこにあるだけでいい。
大空と一緒に輝き微笑むようなぬくもりで照らしていれば、それでいいんだ。
「では晴のリング、
ルッスーリアVS笹川了平
勝負開始!!!!」
開始の合図で戦いのために用意された舞台が眩しい光を放つ。
作り物の太陽のようだった。
「ぐあっ」
了平の声が聞こえた。
見えなくても、ボクにはわかる。
ヴァリアー側のヒトは見えているんだ。
このままでは了平が圧倒的に不利。
『……………綱吉達みたいな子どもがこの戦いに勝てるはず、ないのですよ』
「羽入……………」
いつの間にか羽入は隣に立っていた。
羽入の表情は、悲しみと諦め。
ボクは羽入のこの表情が嫌いだ。
『蒼唯は綱吉達がこの戦いに勝てれば、僕等の運命も変わると思っていますですが、それは無駄な期待なのですよ』
「……………違うよ、羽入」
確かに、綱吉達が勝てばボク等を取り巻く運命も変わるのではないかと。考えたこともあった。でも今は違う。
今は違うことを想い、考えるんだ。
「ボクは彼等にこの戦いに勝って欲しいんじゃない。彼等だけじゃなくて、この戦いで、誰にも傷付いて欲しくないんだ。
【この世界】で、誰にもいなくなって欲しくないんだよ………!!!!」
ただ、彼等を見守りたい。
雛見沢の仲間と同じように、大切に想えるヒト達を誰も失いたくない。
「了平は負けない。彼は運命に負けない。ボクはそれを信じてる」
勝負に負けたって構わない。
また傍にいてくれれば、それでいいんだ。
また傍で笑っていてくれれば、ボクはそれでいい。
彼等が無事で笑っていてくれるのならば、それ以上のことを望んだりしない。
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