皆殺しの物語


□拾
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◇初戦◇
戦いがはじまる















声が、聞こえた。
雛見沢にいる梨花の声が。

運命を嘆き、自分の無力さを怨む声。










「よくわかった!!この世界が袋小路だということがよくわかった!!!!もうお前達には興味ない、この世界にも未練はない!!」










梨花は信じていた。
惨劇の運命など起こらないと、誰も狂ったりしない世界であると。
この世界に、深く執着していた。

あんなにも希望に溢れていた世界が一つの小さな出来事で、絶望的な世界へと変えてしまった。










「お前は山奥で焼かれて死ね!
お前は睡眠薬で自ら死ね!!
みんな死ね死ね、みんな死ね!!!!

どうせ終わる世界なんだ消えてしまえ!!
うわあああああぁあぁあぁっ!!!!」











梨花、梨花………!!
ごめんなさい、ごめんなさい。

近くにいることが出来なくて、運命を覆すことが出来なくて。



どうか、許してください。
無力な存在で非力な存在で、力になることが出来ないボクを、許してください。








「…………………………何故、泣く」








目の前にいる紅い瞳の彼が、まるで私≠フようだった。

悲しいのに泣けない。泣こうとしない強い意思を持った瞳。優しい瞳……………
ボクは泣ける、泣くんだ。



彼の伸ばされた手が、頬に触れようとした時だった。ボクと紅い瞳のそのヒトとの間の地面につるはしが刺さった。








「そこまでだ、XANXUS」








声のした方を見れば、家光がいた。

ボクは、こちら側にいてはいけない。
綱吉達にも心配をかけてしまう。








「ごめんなさい………、ありがとう。名前も知らない優しいヒト」








綱吉達のいる場所に戻れば、みんなが心配していた。そして、戻ったことに安心してくれた。








「蒼唯、怪我!!」



「大丈夫。見た目より酷くないから」








家光はXANXUSと呼ばれる紅い瞳の男のヒトと向き合っていた。殺気が痛い。

家光は『ボンゴレ門外顧問』という役職で組織の中では2番目の権力を持つらしい。
門外顧問である家光と、ボンゴレ9代目である現頭領。2人が指輪の半分を管理し、欠けた指輪が2つ揃って後継者の証になるという。








「ボスと門外顧問が別々の後継者を選ぶなんて、めったにあることじゃないけどな」








何か嫌な予感がした。
9代目からの勅命には、綱吉と同じような橙色の炎が揺らめいて灯っている。








「イタリア語で書いてある……………」



「綱吉、貸して」








綱吉の手にあった勅命に、ボクは何故か手を伸ばしていた。

『いたりあ』語。
知らない異国の言葉のはずなのに。








「【今まで自分は、後継者にふさわしいのは家光の息子である沢田綱吉だと考えて、そのように仕向けてきた。だが最近死期が近いせいか私の直感は冴えわたり、他によりふさわしい後継者をみつけるに至った。

我が息子であるXANXUSである。
彼こそが真の10代目にふさわしい】」



「なぁっ!?あのヒト9代目の息子なの!!!?
それに、蒼唯イタリア語読めんの!?」



「黙ってろ」








何故だろう、すらすらと意味がわかる。
初めて見た異国の言葉なのに……………








「【だが、この変更に不服な者もいるだろう。現に家光はXANXUSへのリングの継承を拒んだ。かといって私はファミリー同士の無益な抗争に突入することは望まない。そこで、皆が納得するボンゴレ公認の決闘をここに開始する】」








これが、本当に9代目の伝えたいと思った言葉なのだろうか?
この暖かい光が、争いを望むのだろうか?

言葉の意味はわかった。
だけど9代目の意図は理解出来ない。








「つまりは……………
同じ種類のリングを持つ者同士の1対1のガチンコ勝負だ」








あぁ、戦いがはじまる。
惨劇の役者達が揃ってしまったから。



この世界の運命は、
決められた終幕に向かっている。

転がりはじめた石は、止まることはない。
ただ勢いを増して転がり続けるだけ。














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