皆殺しの物語


□弍
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綿流しの祭まで、2週間。
この限られた時間の中で、ボクは何を得ることが出来るだろうか。








「へぇ〜、良かったじゃねぇか。親父さん帰って来るなんて!」



「うん………、ま、まぁ……………」








この世界は不思議だ。
最初からはじめたはずなのに、綱吉達と出逢う前の時間じゃない。まるで骸との戦いという出来事が終わった日常風景だ。

そう、時間が過ぎた世界。
ボク等の遡る時間は、どんどん短くなっていく。だけどここは雛見沢で例えるなら、綿流しの祭の後。惨劇を回避した世界。
………そんな世界に行ってみたい。
ボクが廻るのは、綿流しの祭の少し前。
惨劇が起きる6月の世界。








―――――ね、蒼唯だっておかしいと思うでしょう?」



「ふぇ!?ぁ、う、うん………?」








いきなりの話に咄嗟に肯定してしまった。
なんでも、綱吉の父親が2年ぶりに帰って来るらしい。








「あんな父親………、今更帰って来られても……………」



「そんな言い方は、良くないと思う」








ボクに親と呼べるヒトはいない。
だから、綱吉の気持ちはよくわからない。

でも、親が子供に悪口を言われることは、きっと嫌だと思う。








「はあぁぁぁ〜………」








綱吉の漏らした大きなため息に、ボク等は顔を見合せた。と、武が何かを思いついたように笑って見せる。








「なぁ、このまま遊びに行かね!?」



「えっ!?」



「そうしましょう10代目!!」








綱吉を励ます隼人。
なんでも隼人の家庭はどろどろぐちゃぐちゃの泥沼らしい。

親がいてくれること。
それだけでいいとボクは思うんだけどな。



今日は日曜日。
2週間先には、綿流しの祭が待っている。

6月の惨劇が繰り返される。
梨花はこの世界で、どれだけ頑張ることが出来るだろうか?ボクはどれだけ梨花の力になれるだろうか?








「蒼唯?どうかした?」



「……………なんでもないよ。にぱ〜☆」








ボクは今、上手く笑えているだろうか?

偽りの感情なんて何度をつくってきた。
なのに、綱吉にはそれが見破られている気がする。どうして、どうしてだろう?



笑っていて欲しいのに。
どうしてそんな悲しそうな顔をするの?

どうか、お願い。
笑っていてください―――――















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