罪滅しの物語
□弍拾陸
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◇決着◇
勝負は終わり
蒼唯の過去を垣間見た。
断片的な過去の幻覚は、蒼唯の抱え込んでいる大きな問題を知らしめた。
わからないことばかり。
謎ばかりが深まっていく。
一体彼女は何と戦い、何を抱えているのだろうか。
『蒼唯は、変わりましたのですよ………!!
ただ見ているだけの無力な傍観者を止め、運命を打ち破るカケラを探すため、1人でこの街にやって来たのです!』
羽入はあの世界の結末を知っている。
無くなってしまった世界を。
過去になり、もう遡ることの出来ないあの世界を覚えている。
繰り返されてしまった惨劇の結末。
彼は、救えなかったことを悔いました。
彼は何度も何度も自分を責めました。
そして変わろうとしている。
蒼唯も同じく、変わりはじめている。
「終わってしまった過去の世界に、興味はありませんよ。ただ、僕はこの世界にいる彼女を死なせはしない。そして僕は、彼女の望みを叶えてみせる!」
『骸………、貴方は間違っています。今の蒼唯は、この世界が無くなることを決して望んでいないのです』
「お前は自分の都合を蒼唯に押し付けているだけだ。蒼唯はそんなことを望まない。
だから俺が、止めてみせる」
骸は声を上げて笑った。
そして、冷たい視線を綱吉に向ける。
骸はマフィアを嫌うようだった。
彼はもともと、マフィアを追放された人間なのだから当たり前のことかもしれない。
しかし、綱吉はマフィアの話をする時の、骸の冷たい瞳に気付いていた。
「怨みか………」
「おっと、これ以上話すつもりはない。君は僕の最強形態によって僕のものになるのだから………、見るがいい!」
骸の体から、骸の分身のような黒い幻覚が飛び出した。幻覚であると気付いた綱吉だったが、本物のつぶてを潜ませたその攻撃を真正面から喰らう。
『綱吉………っ!』
「わかってる!!」
綱吉は体制を立て直した。
グローブの炎は鼓動するように強く灯る。
そして綱吉は、骸の背後に回りこむ。
羽入は驚いたまま固まっていた。
どうしてなのか自分でもよくわからない。
信じてしまえば傷付くとわかっている。
期待すれば裏切られると知っている。
なのに、いつの間にか彼等のことを認めている℃ゥ分がいる。
無意識に呼んだ。
無意識に答えた。
発した声。
聞こえた声。
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