罪滅しの物語


□玖
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◇歯車◇
回りはじめてしまう















都会の学校、並盛中学校にいよいよきちんと転校して、奇妙な赤ん坊、リボーンと出逢ったその日の夜のことだった。



陽が落ちた空を見上げれば、胸がきつく締め付けられる。

レナが、過ちを犯してしまった。
間宮リナという女を殺めてしまった。
惨劇の歯車は加速して回りはじめる。










『転がりはじめたイシ≠ヘ、自分では決して止まれないのです。ただ坂の終わりに向かって、転がり続けるのと同じことなのです』










レナは女と一緒にいた男も、北条鉄平のことも、きっと殺してしまうのだろう。

躊躇なく、悩むことなく。
止まることなく。



止まらない。
転がり続けるイシ≠ヘ、坂の途中で止まることは出来ない。

止まらない。
無情にも回りはじめた惨劇の歯車は、いつかかみ合わなくなって、その仕掛けを炎上させることになる。
燃え尽きるその時まで、止まりはしないのだ。










『蒼唯。いつまでも此所にいたところで、雛見沢では惨劇が起きます。惨劇を打ち破るためのカケラなんて、どこにも存在しない。蒼唯が無理にこの地に留まる必要は、ないのですよ…?』





「そうならば、ボクの選択は最初から無意味だったことになる。………賽子を振る前から1が出るとわかっているなんて、ゲーム自体はじめることが無意味だと思ってしまう」








ボクが此所にいることに意味はない。
それはあの満月の、雛見沢の外に出たあの夜の覚悟さえ、なかったことにしてしまう。

傍観者をやめ、戦うと決めたのに。
梨花のため、仲間達のため。
雛見沢を守るため、惨劇を打ち破るために決意した。



梨花が死ねば、ボクの意識も【次の世界】へと廻るだろう。
最期のその時まで、ボクは自分の選択を悔いなきものにしなければならない。








「ボクはまだ、雛見沢に戻るわけにはいかない。ボクはまだ、何もしていない。何も見付けていないんだよ…!」





『蒼唯………』





「例え【この世界】の惨劇を止めることが出来ないとしても。【次の世界】の惨劇を止めることは、出来るかもしれない」








この後、幾つの【世界】を廻るかわからない。
廻るかさえもわからない。

だけど、ボクは信じている。



いつか仲間達が笑い合えることを。
惨劇のない平和な【世界】が訪れることを。

この6月を、越えることを─────















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