罪滅しの物語


□漆
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◇故郷◇
少女の居場所















レナと他愛ない会話をして、最期に電話を知恵に戻し健康のことを再三釘を刺された。

電話を終えて一息ついていると、綱吉逹が何か聞きたいような顔をしていた。
電話をしていた時間はそんなに長いものではなかったと思うのだけど、綱吉達を放って電話に夢中になってしまっていたようだ。








「………前の学校の友達から、でね。さっき話していた部活のめんばーが代わる代わる話をしていたの」



「蒼唯の前の学校ってどんな所なんだ?」



「小さな分校なんだ。学年も年齢もばらばらな村の子供が、みんな一緒に勉強しているの」



「学年バラバラなの!?」








興宮の学校やこの学校とはまるで様子の違う。
雛見沢だからこそある環境。

ボク等と同い年と言えば、圭一とレナだけだ。
といっても、ボクと梨花は実際、彼等よりも、もっと年寄りってことになるのだろうけど。








「30人に満たないよう教室で、先生が一人。そもそも村の住人全員でも、2000人くらいしかいないからね」








でも、ボク等の団結力は固い。
それは、だむ建設反対運動で実証されている。
村がだむの下に沈むなんてこと、絶対にあってはならないと、強固なる意志で抗ってきた。
だから、それは決まっていること

綱吉達も、もしかしたら知っているかもしれない。
雛見沢と言う土地に対する認識を決めるきっかけとなる出来事。








「聞いてる限り、すげぇ田舎だったんだな…」



「うん、凄く田舎なの。でもね、素敵なところもたくさんあって、狭く小さい村の中では人と人とが繋がっている」








こうして雛見沢の外に出て、繰り返してきたあの箱庭のような土地を、こうして想うことになるとは考えてもみなかった。

例え、惨劇の舞台となるとわかっていても。
ボクにとって雛見沢は大切な居場所だ。
かけがえのない、故郷だ。








「蒼唯は、その場所が好きなんだね」



「大好きだよ。………その場所を守るためにも、此所でなすべきことをなさなければならない」








梨花が死んでしまった【後の世界】
雛見沢では大災害が発生し、多くの村人が犠牲となる。
その大災害が偽物であることをボクは知っている。
でも、それは所詮、梨花が死んだ、仲間達がいなくなった【終わってしまった世界】に過ぎない。

時に圭一や魅音、沙都子や詩音が生き残っていても、長く生きていたことはない。



それに【終わってしまった世界】は、どれだけ想っても、元には戻せない。
亡くなってしまったものは、甦らない。








「蒼唯?」



「……………なんでもないよ」








終わったことを後悔するのは止めよう。
後悔したって元には戻らない。

【終わった世界】を嘆くのは止めよう。
どんなに嘆いたって、過去は変わらない。
そのために、ボクは変わることを決めたのだから。








「蒼唯……………」








何故か綱吉達の表情が悲しみに変わっていた。

どうして、そんな風な顔をするのだろう。
ボクはまだ出逢ったばかりの他人だと言うのに。















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