罪滅しの物語


□肆
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◇表情◇
コロコロ変わる万華鏡















蒼唯を含めた4人は教室を出て、下駄箱のある昇降口へ向かおうとしていた。
と、冷たく凍り付くような気配に思わず身の毛がよだつ。



教室を出た廊下に1人の少年。
並盛の風紀を乱す者へ、容赦のなく制裁を加える風紀委員長、雲雀恭弥の姿だった。
「げ」とか「うわ…!」とか「マジか…」とか、思わず思ってしまったその言葉は、心の中だけで留めることはできずに声になる。







「騒がしい声が聞こえてくるかと思えば、やはり君達か」








雲雀のことを知らない蒼唯だけが、平然としている。
その刺々しい雲雀の威圧感に何も感じることはない様子で小首を傾げている。

今ここに、下校時間を過ぎた校内にいることの意味を綱吉達は嫌々ながらも重々に理解している。
雲雀の横暴さと言うか、並盛中に対する想いの強さもよくよくわかっていて、それを犯せばどんな仕打ちを受けるのかも。








「下校時間はとっくに過ぎているはずだよ。僕の学校で何してるの?」



「ぃ、いや、その………!!俺達は忘れ物を取りに来ただけで、別に怪しいことは何もしてないんですよ!!!!」








説明してみるものの、この後どうなるかはわかっていることで。
そもそも「僕の学校」に突っ込むことはない。








「ふーん、でも並盛の風紀を乱したことに変わりはないね。それに、僕の前では群れないでくれるかい。連帯責任で、この場にいる全員を咬み殺すから」








彼の手には、既にセットで見慣れたトンファーが握られている。

理解の出来ない状況に、蒼唯はキョトンと目を丸くしている。
山本とはまた違って自然に受け流すような反応で。
この場でそんな反応ができていることが、なんだか凄く肝が座っているように綱吉には見えた。








「よし、昇降口までダッシュだな!」



「むぅ…?」



「早く行くぞ、このチビ女!!!!」








山本の言葉を合図に雲雀から踵を返し、教室の前から廊下を駆け出した。
状況のわからないまま、蒼唯は獄寺に手を引かれる。








「わぉ、鬼ごっこのつもりかい?僕の前で並中の廊下を走るなんて………、君達はぐちゃぐちゃに咬み殺す」



「ひぃー!!!!(鬼ごっこの鬼が何か違う!!捕まったら咬み殺される!!!!)」








廊下を全力疾走し、昇降口を目指す。
途中、雲雀の容赦ない攻撃により、校舎が破損するも、綱吉逹はなんとか昇降口までたどり着いた。

蒼唯は未だに状況を理解出来ない様子で、キョトンとした表情のままだ。








「やっぱ雲雀は恐いのな!」



「ひばり………?」



「さっきの追っかけて来た奴だ。アイツに関わるとろくなことがねぇ…」



「ふーん」








蒼唯は納得したように、一人頷いた。
まるで幼子が大人に諭されて社会のルールを学ぶような姿に思えた。








「もう鬼ごっこは終わりなのかい?」



「「「!!!?」」」








いつの間にか昇降口に現れた雲雀に、蒼唯以外が驚いた。
この早さで追い付くとは、いや追い越し、昇降口の方から現れたと言うことは、恐らくどこかの窓から外に出たに違いない。
相変わらずの常識はずれ。

蒼唯は「あれがひばり」と姿を見て、更に納得したように一人頷いた。















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