罪滅しの物語


□弍
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◇出逢い◇
彼等は出逢った















夕暮れの空が広がっていた。
太陽は西へと傾き、空は燃えるような赤色に染まっている。
東の空は暗く、早くも星が輝いていた。

もうすぐ夜がやって来る。
今年は例年にない暑さが続き、昼間には早くもセミが鳴き始めていて。
薄暗くなるとひぐらしの鳴き声が聴こえ始める。



既に下校時間を過ぎた並盛中の校内には、昼間の賑やかさはなく、静まり返っていた。








「2人とも、付き合わせてごめんね…」



「気にしてないぜ!」



「10代目の為ならば五往復は余裕です!!」








誰もいないはずの薄暗い廊下に、少年達の声が響き渡る。



下校時間を過ぎた学校へやって来たのは、忘れ物を取りに引き返して来た沢田綱吉達であった。

綱吉は一緒にいる獄寺隼人の言葉に、ただ力なく笑う。








「(五往復もしないって!!というか、下校時間のとっくに過ぎた学校に来たことが、もしあの雲雀さんにバレたら……………
か、咬み殺される!!)」








脳裏に浮かぶのは、学校と街の風紀を取り締まる恐怖の風紀委員長、雲雀恭弥。

彼との出逢いは最悪で、第一印象からいい思い出がない。





周りから何をやってもダメダメな人間、アダ名まで『ダメツナ』と呼ばれ、馬鹿にされる生活を送っていた綱吉。

そんな彼が大きく変わりはじめたのは、かれこれ1年ほど前にイタリアからやって来た、小さな家庭教師が原因である。



自分をマフィアのボスにするためにやって来たという小さな家庭教師でありながらヒットマンでもあると言う彼は、必ず周りで騒動を引き起こし、綱吉や周囲の人間を撒き込んでいった。
綱吉にとってはもちろんありがた迷惑な自体で、マフィアのボスになんてなってたまるか。

しかしながら。








「それにしても、弁当箱忘れるなんてツナらしいのな!」



「テメェが10代目を無理矢理引っ張って、教室を飛び出したせいだろうが!!!!」








こうして忘れ物を一緒に取りに来てくれる友達が出来たことは、家庭教師のおかげであると言える。

イタリアからやって来た、当初は自分に敵意を向けていた獄寺隼人も。
野球部のエースでありながらも、自分と同じように悩みを抱えながら屋上からダイブした山本武も。
今では信頼できる友達で。








「(前までの俺だったら、1人でビクビクしながら取りに来るか、明日までそのまま置きっぱなしだったもんな……………)」








友達が出来たことには感謝している。
しかし、家庭教師が持って来る騒動に感謝する日がくるということは今後一切、絶対にないであろう。

そして自分がマフィアのボスになるような自体も、絶対にあっては欲しくないものだ。















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