皆殺しの物語


□参拾
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目を開ければ青い空が広がっていた。
この空を、ボクは知っている。

心地好い風がすぐ傍を吹き抜けていく。
この風を、ボクは知っている。



ここは一体どこなのだろう………?
カケラの世界とは違う、誰かの世界なのだろうか。











風は空を支える存在なのです
風は全てを繋ぐ絆なのです

空が表情を変えるために、風は干渉し影響を与え、そして天候を紡いでいく
空は風がいるから成り立っているのです



だから『大空』を支える『風』が
あなた≠ェ必要なのです─────











聞こえた振り返れば、そこには私≠カゃないボクがいた。でも、ボクとはまた何かが違う。
私≠謔閧焜{クに近い存在。
だけど、やっぱりボクとは違っていて。

このヒトは、誰なのだろう………?










私はあなた≠ナす。
でも、今のあなた≠ニは違う存在。
あなた≠フ忘れてしまった過去の存在。
それが、私なのです─────











過去の、ボク………?
ボクは今まで自分という存在についてよく知らなかった。私≠ヘボクのことをなんでも知っていて、今目の前にいる彼女≠ヘ過去のボクを知っているのだろう。

ボクはどんな過去に存在だったのか?
どうしてそれを忘れてしまったのか?
どうして過去のあなた≠ニボクは違うのだろうか?



知りたいと思う気持ちが溢れてきた。
ボクは自分のことを何も知らずに今までを過ごしてきたんだと改めて思う。
今は、知るべき時なのかもしれない。










知るべき時………、そうです。
あなた≠ヘ、【次の世界】へと廻る前に知っておかなければならないのです
いえ、何よりも私が知っておいて欲しいと思うのです。



過去に起きた悲しい惨劇を。
あなた≠ェ感じた過去の想いを。
私のことを、彼≠フことを。

【過去の世界】のことを。
どうか知ってください─────











彼女≠ヘボクに手を差し伸べた。
優しくて心地よい風が、ボク等の間を吹き抜けてゆく。
ボクは差し伸べられた彼女≠フ手を取った。



ボクは知りたい。
自分の知らない自分を、過去を知りたい。
過去を知ることは、【次の世界】で運命を打ち破る手掛かりになるかもしれない。
………そんな気がした。










世界は廻る。
廻ることで様々なことを学び、知る。

望む未来はきっと、もう目の前にある。















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