皆殺しの物語


□参拾
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―――――最良の結末ではなかったけど、たくさんのことを学んだようね」








月明かりの下。
縁側に腰掛けその月を見上げる者がいた。
長い黒髪、露出した着流し。
不健康なほど白い肌の女だった。

そっと、手にしたコップからその飲み物を口に含んだ。コップに入った氷が静かに音を立てる。








「そろそろ、出逢うわね」








風が、女の黒髪を揺らした。
そっと庭先に視線を向けた女は、そちらを見て微笑みかける。








「何も覚えていないでしょうけど、魂は、私達のことを覚えている。また笑いかけてくれるわ。アナタもそう思うでしょう?
無限の魔女=Aベアトリーチェ卿」








庭先に一羽の金色の蝶が翔んだ。
いや、一羽だけではない。
金色の蝶達は、黒髪の女が見つめていた先に集まり、ヒトの形へと姿を変える。
金髪の女がそこに立っていた。








「そなたはこれが必然だと思うか?」



「この世に偶然はない。だけど、今回必然だったことは彼等の間に絆が出来たこと。それだけだわ」



「魔女に必然などありはしないか」







2人の女は空を見上げる。
ただ月だけが、異質な2人の女達の会話を聞いていた。








「【世界】はとても小さいものよ。彼等はまたあの子と廻り逢い、関わることになるでしょうね」



「ふん。あの指輪を継ぐとは言え、たかが人間ごときに、あの子が守れるものだろうか」



「彼等は強いわよ、これからも強くなる。それに、ヒトほど摩訶不思議で奇々怪々なイキモノはいない………、貴女もそれをよく知っているでしょう?」








金髪の女は笑った。
黒髪の女はただそれを見ていた。








「【どこの世界】でも人間とは面白いものだぁ。なるほど、次のゲームが実に楽しみになったぞ!今回はこれにて失礼する。次に逢う時には、手土産に極上のワインでも持ってくるとしよう」



「その時にはアナタの好きな美味しい紅茶を用意するわ」



「それもまた楽しみにしていることとしよう」








金髪の女は、また蝶へと姿を変え、月夜の空へと舞い去って行った。

その場に一人残された黒髪の女は、自分の隣に置いてある小箱を見つめる。
今はただ持つべき者の訪れを待つそれは、まるで眠っているようだった。








「……………忙しくなりそうね」








黒髪がまた風に揺れる。



別世界の住人達も、動き始めていた。
すでに世界の歯車は廻りはじめている。

【次の世界】の運命に向かって─────














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